■ J-S
名古屋鉄道犬山線の西春駅脇にある小さな古い住居を事務所空間へコンバージョンとした案件です。
この建物は戦前からあったと言われており、80年は経っている木造の建物。
工事前の間取りは、6帖二間の和室に、玄関スペース、大きめの倉庫を兼ね備え、建物奥の僅かな空間に水廻りを増設してありました。
当初の希望の中には、新しい住居空間へのリノベーションというお話しもありましたが、電車の線路脇という立地ということもあり、音や振動の問題から事務所スペースへとする内容で確定。老朽化の酷かった水廻りの増築部分は全て撤去(減築)した上で、最低減のコストで計画を行いました。
外観は以前のトタン板のイメージを踏襲することで、これまでの地域との一体感を残しました。その上で道路との間のほんの僅かなスペースも植栽を植えることで、以前のバラック的な印象とは違い、爽やさ・優しさを新たに加える配慮を行いました。
そして前面道路は、北に位置する神社から延びる一本道で、昔からの商店街の名残を僅かに残す道でもあります。今回のコンバージョンが少しでも地域に明るい雰囲気を創り出すことを願います。
また室内の仕様は、コロナ禍や物価高騰などの影響もあり、現在の一般的な事務所の仕様では敢えて進めず、建築物として成り立たせるために必要な最低限の材料「以外」のものを一旦そぎ落とし、用途的に必要となる機能を担う材料だけを拾い上げました。空間自体は、小屋組がトラス構造となっているため、広がりのあるボリュームが確保できることから、今後のこの場所の展開を見据え、将来的に他の用途でも上手く使えるよう、間仕切りなどの隔てるものを削減した間取りとなっています。
令和の時代でも戦前に造られた素朴な構造、またトラス構造に使用されている金物の経年劣化を身近で垣間見れるのは、この場を事務所として使用している弊所にとって、かなり有意義な空間とも言えます。