土地面積: 200.26㎡
延床面積: 215.98㎡
明治12年(1879)に建てられた民家の改修です。
立派な木材と高度な技術を結集して造られた住まいは、いくたびかの改変・増築を経て住み継がれて来ました。住まいの南面中央部に位置する広い玄関土間と、その横に同じく南面してつながる豪壮な小屋組みが現しの板間はほとんど使われておらず、南面2階に改修して設けられていた子供室は、既に成人して空き部屋となっておりました。 式事用の二間続きの和室も含め、大きな民家の主たる部分を避けるように、周辺の部分や附属屋で二世代のご夫婦は慎ましやかにお住まいの現状でした。 内部の床には細々とした段差が多く、上部に子供室を設けた玄関土間は直張りの天井がたいそう低くて床を張っての活用を阻んでいました。
改修の主目的は以下です。
・空間の有効活用
・防寒対策
・腐朽材の交換と構造補強
住まいを南北のゾーンに分けて考え、それぞれの部分では床の高さを整理して揃えます。南面する旧玄関は、住まいの中心として床を張ってリビングダイニングとし、上部の2階子供室を撤去して天井の低さを軽減すると共に上部からも光が振り注ぐようにします。 北側に隣接する従前の床高さの和室とリビングダイニングとは、床座-椅子座の床高の差となって、互いの視線の高さが揃います。新たにデザインし直した間仕切りの紙障子は、視線の高さで横一列を透明ガラスとし、視線の行き来を暗示しています。
リビングダイニングからは和室越しに北側の庭まで視線が抜けていきます。
豪壮な小屋組みが露出する旧板間は、冬の厳しい寒さに居室としての利用には向かず、趣きある玄関として再生を図りました。角材で構成され、光に満ちて明るいリビングダイニングとは対比的に闇が映える空間です。
長い年月屋根の上で住まいを守ってきました鶴の鬼瓦を、床からの間接照明に浮かび上がるように飾ってみました。リビングダイニングへ通ずる間仕切りの紙障子には所々に色和紙を配し、禁欲的な闇の空間にほのかな色気を添えています。
■Photo:中村写真工房 中村大輔
■掲載:「古民家スタイル」No.19 (ワールド・ムック995)
「A-Collection」015号 (アーキテクツ・スタジオ・ジャパン)
「建築家のアスリートたち」BS12 2014/5/3, 5/17放映
土地面積: 200.26㎡
延床面積: 215.98㎡