■ Stir
まちを動かす小さな生態系としての建築 暮...作品紹介
庭をなぞるように展開する建築
建物は栃木県塩谷郡塩谷町に位置している。周りには大谷石の蔵を持った家々と田畑が広がり、長閑でゆったりとした時間の流れる風景が続いている。ご家族はこの広い土地を代々に渡って守り、そこには母屋があり、離れがあり、蔵があり、店があり、井戸があり、畑があり、庭がある。そして若い息子さんが結婚されるのを機に、もう一つ離れを作りたいという事でお話を頂いた。
そこで庭や畑が広がるこの豊かな環境と呼応するような、平屋建ての建築を展開させたいと考えた。建物は車寄せも含めて3つの大きな屋根で構成されている。それぞれの屋根はそれぞれの傾きを持って周囲へと展開し、環境と馴染む高く明るい軒先空間を作っている。また3枚の屋根は半分開かれた中庭を作るように配置され、全体としてコの字型の平面形状をしている。そうすることによって中心と表裏の無い明るく開かれた建築が立ち上がるのではないかと考えた。
限られた予算、限られた面積の中でも、内外が混ざり合うようたっぷりと気積をとっていく。明るく開かれた建物を光と風が気持ちよく抜けて行く。素朴でありながら庭と繋がるとても豊かな環境が立ち上がったと考えている。新たに加わったこのハナレが、他の建物と共にこの土地の歴史を一緒に紡いでいくことを期待している。
PHOTO:Kai Nakamura