■ Stir
まちを動かす小さな生態系としての建築 暮...作品紹介
発見に満ちた日々の場をめざして
駅から町の商店街を抜け、少し歩いていくと明るく開けた区民農園が見えてきます。近くには生産緑地や公園もあり、緑と住宅が交じり合う少し長閑な土地の端にこの集合住宅は建っています。そして部屋のある4階に上ると、大きな窓の先に今辿ってきた景色が遠くまで広がっているのが印象的でした。緑が広がり、その向こうに小さく電車が見え、さらにその先の広い空には雲がゆったりと流れています。
この明るく広がりのある場所の豊かさを活かし、極力オープンでありながら家族がやわらかく居場所を見つけられるような空間を目指しました。既存の間仕切り壁をすべて取り除き、そこにやわらかウォールを立ち上げます。鉄板をシナ合板で挟み込んで作られる厚さ34㎜のそれは、空間をやわらかく分節しながら繋ぎ、そこに居心地を作りだします。さらにキッチン台がふにゃっと伸びてつながった大きなテーブルや、天井を見上げる間仕切収納、風を包み込む色鮮やかなカーテン、柱に寄り添う扉など、愛着を促し空間を繋げる様々なモノたちが一つの空間に同居しています。こうして立ち上げられた家が、家族の成長とともに明るくのびやかに育って行くことを期待しています。
PHOTO:Kai Nakamura