所在地: 東京都 中央区
作品紹介
大正15年開業、築地寿司岩総本店の改修。
銀座歌舞伎座から勝鬨橋へ向かう晴海通りの築地界隈の賑わいに面し、気付かず通り過ぎてしまうほどの小さな間口。暖簾をくぐると、老舗ならではの馴染み客と板前さんがゆったりと言葉を交わしながら過ごす空気が流れている。そんな空気を内に秘めた結界となるファサードの再構成と一階カウンター周辺の改修計画。
雑多となりがちな入口周辺は、かつてのこの界隈の街並みの構成要素でもあった左官壁と格子に絞り、暖簾で迎えるしつらいとしている。潮風と車の粉塵を考慮して、格子は亜鉛メッキしたスチールと人工木材による扉とし、受変電盤、メーター類、散水栓、掃除道具置場といったバックヤードを内包する機能と落ち着いた佇まいを両立させている。また店内の石材による既存カウンターを無垢の檜カウンターに置き換えることで訪問客が建築の触感のストーリーと共に寿司を愉しめる空間を作り出している。
写真:大木大輔