所在地: 滋賀県
土地面積: 252㎡
延床面積: 118㎡
湖の家。
敷地は緩やかな丘にある住宅地で、目線を2階の高さまで上げると琵琶湖を見渡すことができる場所に位置していた。施主は長年滋賀で生活してきたご夫妻であり、琵琶湖を眺めながら暮らす家がコンセプトである。
ユニークな形状、2階リビング、そして広々とした家庭菜園用のオープンスペースが施主の希望であった。そこで、1階は町並みと軸を揃えて、2階は琵琶湖に向けて軸を振ることにした。シンプルな操作でボリュームを斜めに重ねることで、ずれた部分が地上では菜園や物干しの屋根に、2階ではバルコニーとなって生活に溶け込む。施主のご主人は外壁材を取り扱う会社にお勤めのため、外壁材や内部設備はすべて施主指定のもの。そのような住まい手の想いは大切にしたいと感じ、各要素のバランスを取るようにおおらかに設計を進めた。
2階の窓辺に琵琶湖を望むちょっとした仕掛けをした。窓は風景と直接つながれるように大きめの引き戸として、ペットの落下防止を兼ねた折りたたみ式のローテーブルを設えた。ちゃぶ台のような高さで、琵琶湖に向かってぼーっとくつろぎながら書き物をしたり、ちょっとコーヒーを置いたりと自然と家族が定着するきっかけをささやかに添えた。構造は木造として、1階と2階の間を少しだけ束で持ち上げている。この束立てがバッファーとなって上下階の角度差を吸収し、造形的にも上下階がかみ込まない。
17世紀から描かれる近江八景のひとつである堅田もほど近い。歌川広重の浮世絵を見れば、女性が床座で琵琶湖を眺めている様子が残っている。時代が変わっても滋賀に根ざして住まう人々の心は変わらない。琵琶湖とその先の三上山が感じられるこの場所らしい住宅を目指した。
Photo : 髙橋菜生
所在地: 滋賀県
土地面積: 252㎡
延床面積: 118㎡