所在地: 北海道
作品紹介
住宅街にある小さな児童公園に直接面した住宅はプライバシーが影響する為か公園を拒絶した様な建物が建てられている様に感じる。近いが故、公園との距離感が保てない事が起因しているのではないだろうか。
拒絶された立面に囲われた公園は周辺環境に対して孤立した印象を受け普段から寂しく感じていた。
図らずも児童公園に隣接した土地で住宅を設計する機会を得ることとなり公園の恩恵を受けながらも程良い距離感を保ちながら公園にも新しい表情を与えるよう住宅と公園の距離感を模索した。
隣地の児童公園は遊具は最小限であり空き地の様な場所であり、近くにあるのスーバーマーケットへの生活道路にも使われている。敷地の周辺の環境から公園に面した東面からの採光と眺望を得ることが必然とされたが、通路として利用する人からの視線も気になり公園と呼応しながらもある距離感を保つ必要があった。
内部空間から連続する様に「外居間、内庭」と名付けた囲われた半外部空間をつくり、この半外部空間を介して内部空間と公園との視覚的な距離感を担保した。公園へ刳り抜かれた様に外部との境界に開けられた大きな開口にはテント地の外部カーテンを半外部空間の性格付けを変化させる装置として設置した。
二階に面した「外居間」はベランダの様に存在するがカーテンを閉めることで内部と一体化し、一階に設けた「内庭」は坪庭のようにより囲われた場所へと変化する。
竣工当初はクライアントもこの半屋外空間やカーテンの使い方に戸惑いを覚えていたが、カーテンを閉め子供が「内庭」でプールで遊ぶ姿や、夜カーテンを閉めて「外居間」で食事を取る姿と少しずつ使いこなしていく様子がうかがえる。生活の中で新たな使い方を発見していく楽しさがそこにはあった。
外部カーテンと大きな開口を持った立面はさながら公園におけるステージの緞帳の様に存在する。風によって揺らめくその表情は公園へも新たに豊かな表情をもたらしているのではないだろうか。
PHOTO: 佐々木育弥