丘の上に立つ別邸
千葉県市原市にあるゴルフ場に併設された別荘地に建つ住宅である。
主に週末に利用することの多い別荘ではあるが、東京に居を構えた施主にとって、東京の住居よりもより暮らしに対する思いが強く、別荘的な仮住まいというよりは、本宅に近い使い方を考えてこの別邸が建築された。
敷地は、ゴルフ場に隣接した別荘地の丘の上にあり、幅11mで長さは50mもある細長い土地である。道路から丘の上の最長部までは8mもの高低差があり、丘の上に計画した建物までは、傾斜を最大限緩くするためにS字に蛇行したアプローチ道路を上っていく。
この別荘地は、ゴルフ場オーナーらがサステイナブルな暮らしをコンセプトとして、コツコツと地道に開発を進めてきた土地であり、現在も開発が続けられている。設計着手前に現地を訪れたときには、まだ砂漠のような状態であったが、設計をすすめている最中にも徐々に工事は進み、道路のや緑化の整備も進んで別荘地らしくなってきた。建物の北側の向こうは、ゴルフ場の2番コースを望むことができ、南側には人工池を含んだ高低差のあるダイナミックな景色が広がっている。
敷地がとても細長いことから、東西方向には開くのは難しく、むしろ南側と北側に広がる景色を取り込むことが重要な課題となった。それを実現するために、構造的には門型の形式を南北に並べて無柱の筒状の空間構成を採用した。
ファサードにも現れる、壁厚のある門型の形状は、そのまま、600mmの幅で並べられた門型の柱を耐力壁として東西方向の耐力を担っている。このことによって、内部には空間を遮る柱は必要なくなり、切妻の屋根構造による外倒れに対しては、ロッドを2階梁レベルで緊結して対応している。
こういった工夫により、内部空間は南北方向に筒状に抜ける空間と、吹抜けを介して縦方向に抜ける空間が交差してダイナミックな構成になっている。特に暖炉を中心とした南側の空間は中庭とバリアフリーに行き来できる土間となり、暖炉とアウトドアを中心とした生活パターンに対応している。