2つの美容室と住宅
群馬県伊勢崎市に建つ店舗併用住宅である。
1階には美容院が2つ並ぶ。この地で長く営む母の美容室と東京で修行して新しく独立することになった息子さんの2つの美容院である。
元々は染物工場の跡地があったが、都市計画道路による道路拡幅に伴い、使われてなかった工場の解体とともに、道路のために供されて大幅に削られた土地の再計画から始まった。
以前から営んでいた美容室も道路拡幅後の新しい道路境界に微妙に重なることから、この期に建替えと同時に建築の再計画にともなって、美容室を2つと息子さんの住む住宅とを合わせて建替えることになった。
この建物の構えは店舗である。住宅の気配を感じさせず、美容室という非日常の構え、訪れるお客さんにとっては、そこでカットをすれば気持ちよく出かけられる・・・、そういった心持ちを大事にするために、道路側からは住宅があるという気配は全く感じられない。
むしろ、2階に大きく横たわる住宅のボリュームは黒いボックスとして背景へと消し去り、それに立てかけられた4枚の板は、そのうちの2枚が白くスッキリと下大きな看板として機能し、もう2枚は自然な素材感を感じさせる木材によるルーバーで仕上げられている。
一階のボリュームは中庭で2つの美容室を分け隔てながらも視線としては繋がりを持たせ、愛らしいシンボルツリーが植えられた中庭に面して奥様が営むネイルサロンがある。そして、外側からは様子が見えない2階住宅は、実は南側には大きく開放されて広々としたデッキとともに開放的な暮らしができるようになっている。