所在地: 東京都
作品紹介
「街のふりをした住まい」
敷地は住宅密集地であるが、街はのどかな雰囲気である。
たとえば周辺の道路上には堂々と桜の大木が点在し、行き止まりの細い路地も多い。
車が進入しにくい代わりに子育てには安心で、人間のスケールを感じるエリアでもある。
都会の住宅地では、車を持たないライフスタイルを選択する世帯も多い昨今を考えると、一周回ってむしろ「21世紀型住宅地」と呼んでみたくなるエリアだ。
新さんの家は、その街の袋小路の突き当たりに計画した住宅である。敷地は69㎡と広くはないが、前面道路は「突き当たり」であるため数世帯の近隣住人以外の歩行者の通行はない。
とはいえ道路に生活がむき出しでは、カーテン閉めっぱなしの風景が目に見えている。
そこで道路境界線に沿って、高さを抑えた塀を作り、暮らしの領域を作ると同時に街とつなぐ役割を持たせる事にした。
塀はいかにも「塀」に見えるよりも、建築のふりをさせる事にし、屋根をつけて、内外の仕上げと同一の仕上げとした。開口部に建具がない事だけが唯一、塀である事を気づかせる程度に。壁の仕上げは、この塀の仕上げ材を家中のベースと設定し、各階に展開している。
photo:西久保毅人