所在地: 兵庫県 尼崎市
作品紹介
敷地には築70年の旧邸が建っていましたが、震災で被災したため、施主は敷地内に3階建ての別棟を建築して暮らしておられました。今回この旧邸を取り壊し、新たに木造建築を再建するというご依頼でした。
ご夫妻二人だけの住まいですが、ご親族で集まる機会も多く、2人での生活空間と公のための空間、2人だけで使う時間と大勢が集う時間、いずれのシーンにおいても違和感のない広さ感と、公私の緩やかな分離を念頭に設計を進めました。旧邸にも愛着をお持ちでしたし、庭の木々はできるだけ残したいという要望もあり、家は取り壊してしまうものの、以前の建物のもつ佇まいの記憶を残しつつ庭の木々を生活の中により身近に取り込んでいけるよう考えました。旧邸の玄関があった場所には今回建て替えた住宅と既存の3階建て住宅を半屋外でつなぐ屋外ロビーを 設けています。ここは、これまでお住まいだった3階建て住宅に息子さんご家族が暮らすため二世帯をゆるやかに つなぐ共通の玄関としての役割を持っています。庭の見え方については、庭全体を見わたすのではなく、それぞれの場所から切り取られた自然の風景として見えるよう開口部を制限しています。屋外ロビー正面からは格子越しに透けて見えるように足元から水に映る緑が垣間見え、玄関ホールでは地窓から水平に広がる緑を見せています。
施主は、風格がありながらも控えめな、生活の中に庭の風景が溶け込むような心地よさを家に求めておられました。そうした庭と建築の関係を、造園の荒木造園設計と協働して考えていきました。
photo:kazushi hirano