■ 竪の家
必要最小寸法の検証と快適性の実証 この住宅は佐々...作品紹介
敷地は、農地に囲まれた緩やかな斜面地であり、北から東まで山並みを一望できる好立地である。しかし、将来敷地の北側に大規模な幹線道路が予定されていることから、現在の農地と将来の住宅地という、ふたつの異なる敷地環境を想定して計画する必要があった。のどかな風景として数十年続いていた場所に、ひとつの建物が加わると、それをきっかけに場所の印象は大きく変わる。
まず、最低限必要な柱梁に大らかな屋根を架けた。1階は、軒下や内庭、縁側、寝室が、等間隔な柱割の中で内外を介して段階的に繋がる。地続きの半外部空間は、周辺の風景へと視線が抜け、山からの季節風の通り道となる。主な生活空間は、将来周囲が住宅地となった際にも変わらず景観が望めるように2階に配置。外部のアプローチから浮いたヴォリュームの中に潜り込むように階段を上ると、大らかな気積をもった生活空間が、その先の眺望に繋がる。
将来この場所は住宅地となる。その時、大らかに架けられた屋根の下の半外部空間は公私を越えて街の余白として広がっていき、近隣の住宅には、その先の風景や風が届くだろう。住宅地の余白が繋がり、風通しのよい、透過性のある街並みが展開すると、いまある農地とは別の魅力的な住環境が生まれる。この住宅がモデルとなり新たな街並みを作ることが出来たら、暮らしはおのずと外部に溢れ、それが街の風景となる。透過性のある住宅計画が新たな住宅地に向けた提案につながることを願う。