作品紹介

この猪子家には三つの大きな要素がある。

一つは昭和初期に建てられた木造の平屋住居と蔵。今回傷んでいた部分を復旧し、一部を改修・修繕した。

もう一つは広大な森の空間。昔は家の庭に立つと近くの海が見渡せていたが、現在は木々が大きく育ちその視界を遮る。

最後の一つは時間。猪子家の歴史と現在を結ぶ時の流れは人を惹きつける。自然は日々細やかに変化する。

森や農地や人の住む陸域と、多くの海の生き物を育む海域が密接に繋がる志摩は、沿岸域ごとに独自の生態系を形成する。

そして、人々の暮らしや活動もまたその中で変化する。

過去から現在の時間軸の中で人と自然の絡み合う「場所」「生」「時」は、民俗学・芸術など、志摩の文化にも多くの魅力を創り出した。

今を生きる我々はこれらを見据え、人との交流の中で繋ぎ合わせ編み合わせ、志摩を世界に発信しながら未来を創る。

この場所と、ここに九十年の時を経て建ち続ける木造建築でそれを具現していきたい。

 

photo:m5_architecte

作品データ

所在地: 三重県 志摩市

延床面積: 104.59㎡

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