所在地: 東京都 目黒区
土地面積: 401.58㎡
延床面積: 331.86㎡
敷地は都内の閑静な住宅街にある。小規模宅地の特例を用いた相続税対策と将来の運用を視野に入れた二世帯住宅の計画である。
間口が広く敷地奥へと窄まる平面形状で、前面の坂道で1m、敷地奥へ2mの高低差があり、敷地奥へと窄まりながら高くなる敷地形状である。奥へと引き込まれるような奥行きのある魅力的な敷地だと感じた。この地形のリズムを活かして見え隠れと陰影によって奥へと誘われるような建ち方で、建物が建ってからも敷地の魅力を感じられる、そんな佇まいの建築を目指した。
そこで、切通しのような建物の裂け目を潜り抜け敷地奥へと誘われるアプローチを計画した。さらにスロープ状の緩やかな迂回動線を計画し複数の動線が敷地奥へと導くことでより奥へと期待感を高める構成を意図した。奥に行くに従って徐々に高くなるボリュームを雁行させた分棟配置の隙間には敷地の高低差を利用した多種多様な庭を配置した。四季折々の植物を散策するスロープ状の通り庭、様々な果実が成るティーテラスに続く丘の庭、ラウンジで緑の斜面を感じる斜面庭、人の集まるベンチがある中庭、自然石とシダによるしっとりとした北庭。奥へと誘われ、歩を進めるごとに様々な空間シーンが立ち現れる豊かな空間体験が展開している
親世帯スペースは将来の賃貸利用も想定して道路寄りに計画し、完全分離型の二世帯住宅としながら、雁行配置による多種多様な庭との有機的な繋がりを介して互いの気
配が感じられる適度な距離感を生み出している。建物内部での往来の自由さを保ちつつ将来の分離にも配慮して二世帯間は風除室で繋ぎ小規模宅地の特例へも準用させている。
落ち着いた佇まいの街並みに対して、ずっとそこにあったかのような自然な風合いを模索して、外壁は小端欠けして表面にムラのある表情を与えたオリジナルの還元焼成タイルに目地を被せ、酸洗い濃度を薄く調整して目地を適度に残した独特な表情を与えた。敷地の特性を活かしたこの建築は長い年月そこにあったかのような、まるで遺跡のように静謐で色褪せることの無い存在感を持ち続けて、この先もずっとそこに佇み続けることを期待している。
所在地: 東京都 目黒区
土地面積: 401.58㎡
延床面積: 331.86㎡