所在地: 神奈川県 横浜市
作品紹介
築18年の集合住宅。学校や公園が近くにあり、子育て環境として最適な住宅街。窓を開けると子供たちの声がかすかに聞こえてくるような平和で穏かな環境です。日当たりもよく、視線の高さで空をたくさん感じる事のできる窓があります。天気の良い日は富士山が顔を出してくれます。ご夫婦とお子さんの3人家族の住まいです。中古で購入された住まいを改装しました。
富士山を望む眺めの良い場所にソファーを配置。背をあずけると自然と空が視界に入る一番の場所です。そのソファーを基点に周りの寸法を決めていきました。空を眺めたり、雲の様子を伺ったり、日が差したり、陰ったり、ぼぉ~っとしたひとりの時間を味わう場所をつくりたいと思いました。朝、一人早く起きた時、家族が出掛けている時、ふとした一人の時間に、このソファーに腰掛け、心落ち着かせる静かな時間がほしい。忙しい毎日の中で、心の平和を取り戻し、我に返る。普段は気が付かないような事に気が付いたり、思いに耽り、物の真理に近づくような豊かな時間を。
この住まいに馴染み、家族に愛されるような場所をつくる為、それに相応しいソファーを造作でつくりました。生地の色や材質、形状、大きさ、座面の高さ、背の大きさ、角度、硬さ、柔らかさ、長時間の使用に耐えるように計画。置き家具になっているので、気分を変えたい時は配置を変える事もできます。背のクッションを外し、枕にしてベッドのようにお昼寝する事もできます。
ご要望は対面キッチン。集合住宅の場合、台所の排水位置を変えるには注意が必要。給排水の位置を根元から変える事ができないから。根元の排水につなげる為、床を上げる。またその根元のある配管スペースが部屋の中央付近にある事がわかり、柱のような形で存在を残す。これらの事は後ろ向きに捉えられる事が多いですが、ここでは前向きに捉え、二列式の対面キッチンを計画。段差はその場所の特異性を強調し、上り下りする楽しさ、視線や気分の変化を生みます。また天井高が低くなり、上部の吊戸棚の使用率も上がります。柱は奥行きと距離をつくり、食卓からの視線を程よく遮断し、見える部分と見えない部分が生まれます。そして勝手口のガラス面から差し込む光に照らされた床や壁や天井が表情と変化を生み、その様子を感じる事ができます。こじんまりと包まれるような落ち着きのある、使い勝手の良い、さわやかで心地よい場所になりました。一段上がった台所から食卓や居間を見下ろす眺めもよいです。
内装には自然素材を多用しています。体感しないとわからないような澄んだ空気感のある場所になりました。床材は節のない目の詰まった木目が綺麗なパイン材。壁や天井は漆喰で仕上げ、光がつくる表情、陰影が美しい。高さのある居間食堂の天井には栂の羽目板を採用し、木視率を上げ彩ります。家具や建具にも無垢材を多用し、手触りよく見た目にも柔らかく味わい深い表情を醸し出しています。自然素材に包まれた空気の中で健やかに、住まいに愛着をもった幸せな暮らし。
この住まいで暮らす事の喜びを常に伝えてくれる建主。生活が変わり、意識が変わり、目には見えない世界、空気や気のようなものが変わる。住まいが人に何かしら良い作用を与えてくれている。そういう事が共有できた事が何よりうれしい。喜びに満ちた住まい。いつも私は元気を勇気をもらいます。