敷地は六甲の中庭に広がる緑豊かな場所である奥池の樹木が生い茂る環境で、できる限り既存の樹林帯を受け継ぐよう計画している。
プランは短形の平面を東西方向に切断してずらすことで、どの部屋にいても木々や風、水が感じられるような構成を考えた。
それにより生まれたスペースが庭や水盤となり、溢れんばかりの緑に囲まれた中で、余韻を生むスペースになっている。
ファサードは自然の風景に溶け込むよう、カラマツや魔治石・杉化粧RCなど素材そのもので構成している。
森の中へと入っていくことを連想させる路の先の門扉を抜けると高さ1500に抑えたアイストップとしたRC塀の背景に木々が広がり、島のさえずりと水の音が聞こえてくる。
玄関扉を開けると天井には水面に反射した光がガラスを透過してゆらいでいる。
1階は書斎と2つの客室からなるプライベート空間とし、外とのつながりを生みだすきっかけとして林に向かって張りだした竹と枕木の緑側空間をつくった。
回路は外への意識を誘発し、敷地の緑と建築を対比させ敷地との関係を結んでいる。
回路の左右に水のゆらぎを感じながら、2階へ上がっていくと正面に諏訪鉄平石の壁が現れる。
LDKに入ると栂木を使用した勾配天井が視線を低い方へと誘導し、開口部から見える木々の葉によって森の中を浮遊しているように感じられる。
動線の起点となるホールの天井高さを抑え、他の????の天井高さを?????に沿った高さにすることで、建築に奥行きを生みだし、空間としての質を高め、広がりを感じさせるようにした。
この敷地を最大限に活かせるよう、高低差が大きく歩きづらい場所には石を配置することで回遊性を持たせた。
裏庭の余白には、木立の隙間を利用して散策路を設けることで、建築と自然のさまざまな表情を見ることができる。
木々の中を進み、足を止め、切株に腰をかけるといった森で佇むような時間を過ごすことができる。
時が経ち、季節が移ろうごとにこの建築は敷地に溶け込み、魅力を増していくだろう。
緑、風、石、水、光が五感を刺激し、住まう人に安らぎを与え、日を増すごとに愛着の湧いてくる愛おしい建築になることを願っている。