施工会社: 山崎工務店・アトリエ淳
作品紹介
マルチプルな境界
前の住人により2戸1化されていた、鉄筋コンクリート造マンションの1室の改修である。
繋げられていた2戸のうち、角部屋の方の主室と水回りなど、もう一方を寝室と納戸などにあてた。主室は、半屋外的なルームテラス・ランドリーテラスやソファースペースなど、タイプの違う場を外壁沿いに配置し、入れ子状の構成をとっている。これらの間には、透明ガラス・フロストガラス・シナ合板を鏡板にした木製框戸を入れ、各々の場との距離や視線などの調整を行っている。框は見付け30㎜で、木製建具としては非常に細いつくりになっている。これは中間層を設けたことによる、主室と外部の距離感を減じるためである。またこの框は、鴨居や欄間の枠とも同じ見付けであり、枠と框が一体的な透明性の高い境界面となる。寝室側は、シナ材によるフラッシュ戸と壁で統一している。主室側とは対照的に不透明な境界だが、開くたびに空間が展開していく奥性をつくりだしてる。
建具は仕切るための道具だけでなく、場と場の多様な関係を取り結んだ、日射や温熱や通風などの環境因子を調節する境界面にもなる。制約の多いマンションや団地の改修では、建具の効果が発揮されやすい。そのような、建具の多元的(マルチプル)な境界面としての可能性の一端が立ち現れている。