所在地: 埼玉県 さいたま市
作品紹介
区画整理により敷地や周辺環境が変化する敷地に普遍的なプロトタイプを考えてみる
敷地は今後10年程度にわたって形状の変更や道路の変更が伴う区画整理区域内にあり、形状も道路付けも現在と異なるかたちとなることが決まっている敷地での計画です。
周辺環境を理解できる現在と、予測のしにくい将来の双方に対して普遍的に存在できる住宅の検討を行いました。
中庭型住宅の一種ですが、住宅自体は単純な家型で、外構の透けるルーバー材による仕切りは目線をカットしつつ光や風や気配を透過しながら周辺環境とつながっていきます。
普段は個別解として住宅を設計する中で、答えではなく公式の様なものを模索し、世の中の多くの人に通用するプロトタイプ住宅を目指したいと思い取り組んだ作品です。
一般解でも特殊解でもない、「ふつうの住宅」を目標として模索したかたちです。
外観の形状は、いわゆる誰もが思い描く「家型」のかたちをベースとし、四角い単純な間取りはコア型のプランニングとすることで平面的に周回できる間取りとしました。
また、階段を間取りの両端に2箇所配置し、2階を完全な通過型の間取りとすることで、上下階でも回遊できるプランとなりUターンの必要ないかたちになっています。
この家の断面形状は基本的に全て一定で、金太郎飴の様な構成となっています。
1階の両サイドに設けた開口による通風は勿論、天窓部も天候にかかわらずに通風できる仕組みを設け、床下空調までを含めた、断面を利用した上下階の通風が積極的に行われる様に計画を行いました。
単純な立体の両側に外構によるルーバーの囲いを設け、外部からの視線をある程度制御することでカーテンの必要ない居住空間を確保し、実空間以上に広さを体感できる1階と、小屋裏の広い体積と天窓から差し込む光によるプライバシーの保たれた2階で構成された、試験的住宅です。
◆グッドデザイン賞における審査員の評価
単純な骨格を持つ住宅だが、どんな家族でも楽しく住めそうな、住宅としての普遍的な価値が実現できている。
1階は、コアで緩やかに分節されつつも、おおらかに広がるワンルーム、2階は、それぞれの個室を確保しつつも、動線は別々に設定され、家全体に行き止まりのない回遊性を生み出している。子供が遊び回ったり、あるいは子供が成長して独立性を求めてもうまく住みこなせそうだし、さらには仕事場を持ったり客人が滞在する場合にも、その都度自由に使い方を発見していくことができそうだ。このような住宅の魅力は、時間が経過しても色褪せることはないだろう。
撮影:藤本一貴
2020年度グッドデザイン賞受賞
建築知識2020年12月号掲載
田島ルーフィング株式会社インタビュー掲載
A-Style 2021年9月号掲載
「居心地のいい家をつくる注目の設計士&建築家100人の仕事」パイインターナショナル社掲載