碑文谷の住宅

作品紹介

「少しだけ住まいをひらく」

70代のご両親と、1年の約半分は海外で仕事をしている娘さんの、3人家族のための住宅である。
要望としては、ご両親の生活が1階で完結すること、2階には娘さんの部屋とゲストルーム(海外の友人も多いため和室を希望)が欲しいとのことだったが、1点特殊な要望として、将来土地の相続の際には約30坪の土地を切り離せるようにしたい、またその土地を現時点では近所の友人とシェアする形での「畑」として使いたい、との要望だった。

「共有の畑」というプログラムを入れ込むことで、顔の見えるメンバーに少しだけ住まいを開く、そのような使い方にふさわしい空間が必要とされた。
そこで、この共有の畑とリビングを「コミュニティ・バルコニー」でブリッジする案を提示した。

このバルコニーは、もちろん基本はリビングに向けて大きく開いている。畑に対しても開いていて、階段ですぐに下りて行ける。ただそのままリビングと畑がお互いに丸見えでは居心地も悪いし、将来的に土地を切り離した際に問題なので、直接は向き合わず90度の角度をつけて向き合う。またリビングの正面には前面道路があるため、そちらには半分閉じる形で手すり壁が回ることで、歩行者の視線は気にせずリビングに光が入り込む。高さの関係も、敷地が道路より1m高いこと・また家具的に使える大きな出窓などを利用し、リビング・畑・道路が互いに絶妙な距離感/開き方で接続される。
ゲストルームである和室は、ゲストがいないときは吹抜けを介してリビングの延長として使えるよう、釣床(つりどこ:床柱・床板を省略した床の間)に対する「付書院」の障子を取り払って大開口とし、リビングと一体的でコミュニティ・バルコニーまで見渡せる、浮遊間のある和室とした。

 

撮影:山岸 剛

作品データ

所在地: 東京都 目黒区碑文谷

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