所在地: 京都府 京都市
作品紹介
- 京都市内に10000軒以上存在する長屋型町家の耐震補強の問題
本計画建物は西陣に位置する3軒長屋のうちの1軒のリノベーションです。長屋はそれぞれ所有者が異なるため、そのうち1人の住人が構造補強をしたいと考えても、構造体の1/3にしか手を加えることが出来ないのが現実です。長屋型町家の耐震補強が進まない原因の1つにもなっていると言えます。
- 3軒同時の構造調査と補強計画
そこで、その打開策として考えたのが3軒の現況の構造調査を行い、将来いつかするであろう構造補強計画を3軒同時に検討することでした。現時点では1/3のリフォームでしか無くても、将来的にどの部分を補強すれば長屋全体の強度が増すのかが分かっていれば、少なくとも可能性は開けると考えました。幸いにも、他の2軒にも賛同を得て、構造調査を実施し、限界耐力計算による全体の構造補強計画を作成することができました。
- 個人所有の町家から長屋型町家保存の新しい試み
今後、この計画書を元に随時、耐震改修され、安心して住み継ぐことができれば、個人的要望から始まったリフォーム計画から、長屋型の町家を未来へ残す新しい一つの解決方法になると考えています。
- 築117年の町家とインテリア
伝統的な町家の良さを残しながら、クライアントが要望する現代的生活の実現を試みています。外観は町家の特徴を色濃く残しており、修復を行いました。外壁や隣家との界壁は断熱材と遮音板を封入した大壁構造としています。そして、その仕上げは100年以上の年月を経た構造体に負けない素材の強さ、素朴さを持ったものとして「ガルバリウム鋼板」と「和紙」を新たに採用しています。一方、間仕切り壁については真壁構造のまま柱を現しとし、既存土壁の上に黒漆喰塗りとして伝統的な町家の良さを生かしています。
また、過去の改装で完全に塞がれていた奥の間の吹抜けを元に戻し、伝統的な織屋建ての空間を再生することによって、ダイナミックな広がりのある空間となりました。
また、過去の改装で完全に塞がれていた奥の間の吹抜けを元に戻し、伝統的な織屋建ての空間を再生することによって、ダイナミックな広がりのある空間となりました。
主要用途 / 住宅
規模 / 地上2階
主体構造 / 伝統木造軸組構法
規模 / 地上2階
主体構造 / 伝統木造軸組構法
写真 / 沼田俊之