春日の住宅

作品紹介

環境性能の最適化を課題とした住宅である。郊外住宅地にある長方形の敷地は南北軸から45度傾いており、道路に面した駐車場を取ると、建物は南東側に寄る。隣家が迫る中では、南側に大開口を取れないため、長方形の1階の上に45度振れた2階の屋根を載せ、敷地南角に向けて大きな高窓を取ることにした。

 

限られた面積の中で開放的な室内を実現するために、1階水回り以外は全て一室空間とした。居室の床面は1階から一段高く、2階の寝室空間と大階段で一体的につながる。

 

構造は、基礎と1階外壁を250mm厚のRC、それ以外を在来木造とした。構造用合板でパネル化した大きな折板屋根は、2階外壁とともに高剛性の木箱を構成し、小径材のみで7.7m x 10.2m の無柱空間を実現している。

 

最小の窓面積で豊かな自然採光を得るために、主な窓は高窓とし、南面の大きな窓には庇を設けて、夏期の直射をカットした。2階と1階の間のスリットも採光・換気に利用している。

1階はRC外断熱として蓄熱を生かし、木箱には現場発泡断熱材を充填して壁体内結露を防いだ。居室1はルームエアコンを使った床下チャンバー空調とし、天井のエア搬送ファンが折板屋根に沿って送る気流が、室温の偏りを最小化することで、快適な室内環境を実現した。

 

環境設備設計上の様々な工夫によって環境性能が向上し、エネルギー消費もかなり抑えることができた。将来的に屋根に太陽光パネルを設置すれば、ZEBにも近づくだろう。しかし建物を永く使い続けるための課題は、エネルギー性能を始めとする技術だけではない。この建物は、外から見ると窓が小さく、開放性が乏しく思えるが、中にいると外の光や空の様子がよく分かり、自然との距離も近く感じられる。また、大きな一室空間の中で、屋根の形状、光の様子、床の高さなどが変化することによって、様々な場所を作っている。こうした場所たちは、将来のライフスタイルの変化に応じて役割を変えつつも、使い続けられることだろう。ここでの生活が楽しく快適で、時とともに変化する使い方に対応してゆくことで、使う人たちに愛され続けることを期待している。

 

Photo:太田 直

作品データ

所在地: 福岡県 春日市

延床面積: 102㎡

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