かざぐるまの家

作品紹介

地方都市に建つ木造平屋の住宅である。
敷地周辺は徐々に農地が宅地化され、田園風景と様々な建物が混在している。敷地は十分に広かったため、混沌とした景観の中にできるだけ落ち着いた環境を作ることを考えた。敷地東側に前面道路、南側には行政機関の建物があって大きなガラス面が面しているため、東と南の両面からのプライバシーを考慮する必要がある。そこで敷地全体を緑豊かな一つの庭と捉えて、その中央に住宅を配置した。道路から見ると、来客用駐車場と季節感のある木々の向こうに落ち着いた色の住宅の外壁だけが見える。

 

夫婦と3人の子どもという家族構成である。建物の中央に家族のための大きな居室を取り、そのまわりに各個室と厨房、洗面・浴室などの小部屋を配置した。平面は小部屋の箱から屋根面を持ちだしたかぎ型のピースを4つ組み合わせて、かざぐるまのような形としている。中央に一つの回転軸を持つ、ほぼ点対称の形である。天井が高い中央の居室空間には四方に大きな開口があり、それぞれの庭を臨むことによって、効果的な通風と空間の開放性を確保した。また、4つのピースの接合部には、熱負荷を押さえながら自然光を取り入れるために、low-Eガラスを用いて細いスリット状のトップライトを設けた。

 

基礎はコンクリートベタ基礎として床レベルまでGLより1m程上げ、建物をできるだけ乾燥状態に保つようにした。屋根全体とそこから連続する外壁には、母屋垂木あるいは柱となる構造リブを450mm間隔で入れ、そこに杉の小幅板を張ることで、平面剛性を確保した。居室空間と諸室を隔てる外壁から連続した壁は軸組工法で作り、壁から連続する屋根面を途中で支えている。4つの屋根面は、スリットに沿ってしっかり結合することで互いに支えあい、大きな無柱空間を実現している。

 

建物を覆うグレーの菱葺きは何か鱗のようでもあり、大きな生き物のようにも見える。家族の成長とともに建物まわりの緑も徐々に育ってゆくだろう。長い時間を経たとき、この土地を覆いつくす林を守る主のようになってくれないかと密かに期待している。

 

 

Photo:Kouji Okamoto

 

 

 

 

作品データ

所在地: 大分県 中津市

延床面積: 389㎡

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