所在地: 京都府 宇治市
延床面積: 90.09㎡
リノベーション
宇治、平等院の参道にもほど近い宇治妙楽はその立地条件と歴史的景観の魅力が再発見され、積極的なまちづくりが進められているエリアです。
そのメインストリートから1本入った細い路地奥に建っていたこの二軒長屋の片割れはしばらくの間空き家となっていましたが、ともすると取り壊されて、控え目で雰囲気の良いこの路地全体の景観が損なわれることを心配した地元在住のオーナーが思い切って物件を取得し、リノベーションを行って動的に建物を保存活用していこうと決心したことがこのプロジェクトのスタートでした。
<考えたこと>
■テナント貸しによる宇治町家の動的保存
路地に面した母屋は1,2階ともに2間続きで、中庭を挟んで奥に平屋の離れが1部屋ありました。改修前の段階では、中庭には浴室やトイレが増築された結果、風や光が遮られ、全体に薄暗い雰囲気が漂っていました。
大掛かりな内装は後のテナントに委ねることにして、まずはできるだけ費用を抑えて建物の健全化を図り、共用部を整理、整備することで1棟丸々にも小分けにしてのテナント貸しにも柔軟に対応できるように計画を進めました。
■動線の整理による各室の独立性の確保と建物全体の健全化
具体的には、1階の室内を通り抜けないといけない位置にあった町家特有の急な階段を通り土間に移し、上下階を明快に区分できるようにしました。
上階のテナントへも気軽にアクセスできるよう、通り土間の上階にあった床は取り払い、小さな吹抜けとしています。
中庭に増築されていた水回りはその周辺の雨漏りの原因にもなっており、これらは取り払って庭を広げ、母屋の1階、離れの両方の居住性を高めました。
水回りは通り土間の延長にまとめ直し、各テナントの共用部としました。
また、こういった建ち方の町家、長屋についてまわる課題として間口方向の耐力壁不足がありますが、全体の構造を調査した上で、耐力壁を適切に追加しています。
■生活文化を感じさせる設えの保存活用
宇治町家の特徴のひとつである路地に面した竹垣は修繕して残すことにしましたが、借家からテナント向けの建物に用途が変わるため、高さや巾を調整して閉鎖性を少し緩めています。
また、通り土間にはモザイクタイル貼りの可愛らしいおくどさんが残されており、これは共用部の照明の役割を持たせて保存することにしました。
おくどさんがあるということは、通り土間はかつて吹抜けで煙出しをしていたはずですから、今回のリノベーションを経て、結果的にこの建物は当初の姿に近い状態に戻った、と言えるかもしれません。
所在地: 京都府 宇治市
延床面積: 90.09㎡