所在地: 京都府 京都市
延床面積: 172.56㎡
リノベーション
築90年を超える伝統工法による木造住宅を改修しました。建主は大学卒業後、生まれ育ったこの家を離れていましたが、退職後の生活を見据えてこの地に戻り、新たな生活を始めることになりました。
元の建物は、この種の建物においては当たり前のことですが、築年数相応の経年劣化があちこちに見られ、また現代の住まいとしては耐震・耐風性能、断熱性能も不足しておりこの先長くこの家に暮らし次世代に引き継いでいくために、大掛かりな改修をするにはちょうど良いタイミングでした。
<考えたこと>
■柱と耐力壁を付加してその間を収納兼空気層として利用
まず、不足している構造・断熱性能を補うため、奥の庭に面してサンルームのような縁側を新たに設け、隣家に接する両側の壁面沿いには柱と耐力壁を付加してその間を収納兼空気層として利用し、性能の向上に寄与する新設要素を外周部に集約しました。そうしてできた入れ子の内側に居室を収め、元の開放的な田の字型プランを大きく変えることなく性能の向上を図っています。
■多様な使い勝手とプランの回遊性
ぐるっと弧を描く間取りによる多様な使い勝手と介護への備え
次に、方向性のない田の字型のプランを手前から奥にぐるっと弧を描く一方通行に読み替え、そこに玄関から寝室に至る諸室を順番に並べていくことでプライバシーの濃淡をつけました。1回転して再び「オモテ」に面する寝室は、将来ひとたび介護が始まると最もプライベートな部屋に他者を受け入れ、寝室から直接外部の各種サービスへと行き来することになるというリアリティに対応しています。また、この円弧の中心に2方向からアクセスできる手洗いを配置することで、多様な使い勝手とプランの回遊性を確保しています。
■プライベートな住宅を社会と接続するための試み
最後はプライベートな住宅を社会と接続するための試みです。2階の諸室はほぼ当初のままの姿で普段は空き部屋となっており、ここには海外からのゲストも含めて建主の友人たちが気軽に中長期的に滞在することが想定されています。また、ギャラリー/サロンと呼ばれる、玄関と一体となった小さなスペースでは、将来ちょっとした展覧会や寺子屋的な教室が開かれることも視野に入れています。そこで、空間的な内外は通常通り玄関戸で仕切りますが、その内側にさらにもう一つ施錠可能な境界線を設け、空気環境的な内外と社会的な内外にズレを生み出し、社会的な「外部」にあたるギャラリー/サロンスペースや2階の諸室により気軽に他者を受け入れやすくしています。
所在地: 京都府 京都市
延床面積: 172.56㎡