所在地: 京都府 京都市
土地面積: 234.92㎡
延床面積: 131.96㎡
新築
京都の街なかに建つ夫婦2人のための住宅です。昔から職住が近接するこの地域を象徴するかのように、敷地の周囲には戸建て住宅やマンション、倉庫や事務所が隙間なく建ち並び、とりとめのない景観となっていました。なかでも南隣の事務所と西隣の5階建てのマンションとの関係は、明るく開放的な住まいというご要望に応える上で、一番の課題であることは明らかでした。
<考えたこと>
■すべての部屋が庭に面する間取り
まず初めに、すべての部屋が庭に面するように、東西に細長い敷地をさらに細長くふたつに分けて、南側を庭に、北側を建物にすることにしました。そして、そのままだと大きな空間を取りたい居間・食堂が収まらないので、そのボリュームだけ南側の庭に張り出すことにしました。こうすることで、居間は東西ふたつの庭に囲まれて明るく風通しも良くなり、南向きに窓を開けずに済んだので南隣の事務所から覗かれることがなくなりました。
また、このボリュームを思い切って1.5階建てくらいの高さまで背を伸ばして、屋根の上に設けた高窓からも自然光を取り込めるようにしました。
次に、必要な部屋を順番に並べていくと、平屋では収まりきらなかったので、建物全体の半分くらいを2階建てにする必要が出てきました。ここで、この2階建て部分を敷地の奥、5階建てのマンションに接する西側に持ってくることで、マンションの5階から見下されることがあっても、こちらの2階の屋根が見えるだけで、南側の庭や1.5階建ての居間・食堂の大きな窓が覗かれる心配がなくなりました。それとともに、おもての道路側は平屋になるので、北側にお住まいのお隣さんの採光も妨げませんし、控えめで品の良い構え方になりました。
■中庭を囲むスチールのフレーム
それでも南隣の2階の窓からは庭が見下ろせることになるので、最後に庭全体を取り囲む背の高い目隠しを取り付けることにしましたが、庭が暗くなっては本末転倒。ここではできるだけ庭の風景を邪魔しないように繊細な寸法のスチールで2階建てのフレームをつくり、その2階部分にだけ光と風を通すFRP製のグレーチングを取り付けました。
このスチールのフレームは、隣地側に残っている古いブロック塀が万が一こちら側に倒れかかってきたときにも、完全に崩れて大きな事故が起こることを防ぐ役割も担っています。
■深い軒の出の果たす役割
それぞれの場所ごとに分割して架けた屋根の深い軒先も大事な役割を果たしています。軒の出の役割としては、まずは夏の日差しをしっかり遮ることと多少の雨くらいであれば窓を開けたままでも室内まで吹き込まないこと、長く建物の外壁を守ることなどですが、ここでは斜め上から見下されたときの視線を遮る役割も担っています。
建物と庭の配置の仕方、間取りの工夫、屋根の架け方、外構の作り方。これらのアイデアが組み合わさった結果、できあがった住まいは静かで落ち着いた市中の山居という風情を湛えています。
所在地: 京都府 京都市
土地面積: 234.92㎡
延床面積: 131.96㎡