理想の住まいを現実のものにするプロジェクト始動
Story
008
東京都目黒区 H邸建築家×インテリアデザイナーのタッグだからこそ叶った、美しい家の物語
透明な日差しに緑の木陰がゆるやかに揺れる、誰もが憧れる閑静な住宅街にH邸はあります。
外壁のタイルや玄関ドアのさりげなくも上質なたたずまいに目を惹かれる外観。
竣工して1年半。
H邸は、もともとこの土地にあった実家から建て替えられました。
建て替えに当たって、ハウスメーカー5社をめぐってプランを作成してもらったものの、似たようなプランばかりでどうもピンと来ない・・・。
そんな時、奥様の友人でインテリアデザイナーのutide 齊藤さんに相談したところ、建築家の菊地正明さんを紹介され、先ずは提案をしてもらうことになりました。
建築家とインテリアデザイナー、そして施主による最強タッグの序章のはじまり・・
スマートに設備機器がビルトインされたキッチン
エントランスを照らす上品なインテリア照明、BOCCHIがお出迎え。
「キッチンでお料理しながら、よくここでこども達の宿題を見ています」というダイニング
菊地さんから提案された設計図を見て、ご夫妻は愕然・・
奥様「何もかもが違いました」
菊地さんのプランは、小さな違和感がぬぐえなかったハウスメーカーとは全く異なるものでした。
土地の形状を最大限に活かした豊かな発想と間取りの自由さ、設備や建材の選択肢の多彩さ・・・等々、決められた枠に閉じ込められることなく、自由な住まいの理想形がそこにはありました。
「土地の形状を活かしてHさんの望む家を実現させるにはどうすればいいか」と考えた菊地さんは、3階建てを提案します。
この3階建ての提案も、菊地さんはいとも簡単そうに提示していますが
土地の制約上手続きや図面の塩梅は難しく、ハウスメーカでは3階建ての発想はそもそも無理なものでした。
広い玄関、スキップフロアの広々したリビングダイニング、ロフトのある子ども部屋、開放感のあるテラス、愛車2台が並ぶビルトインガレージ。
ハウスメーカーのプランではかなえられなかった住まいを現実のものへと変える作業は、菊地さんたちの提案によって次々に進んでいきました。
ひろびろと繋がるスキップフロアのリビング。スッキリ配置された熱帯魚のアクアリウムも美しい
ボルダリングにロフトのある子ども部屋。インテリアデザイナーのutide 齊藤さんに相談したので一人で悩まなくて良いのが良かった!と感想を漏らす、遊び心のある色使いが素敵です。
数々のインテリア調和を支える設計の見えないチカラ
建築家とインテリアデザイナーによるシナジー
H邸の魅力は、壁、照明、床、ドアなどのパーツが見事に調和して、素敵なインテリア空間を創り出していることです。
その理由は、建築家である菊地さんとインテリアデザイナーのutide 齊藤さんの二人の協働によって家づくりが行われたことによるものです。
「お二人の連携が素晴らしくて、安心してお任せできました」と奥さまは笑います。「家を作るための素材は、壁紙一つとっても無数にあって。たとえ気に入った壁紙が選び出せたとしても、それと相性の良い床材がどれなのかが分からない。そんな時に、私たちの意図を理解して提案してくれるお二人の存在は本当にありがたかったですね」。
たとえば、H邸には既製の建材はほとんど使われていません。ドアなどの建具もクロゼットなどの収納家具も、インテリアデザイナーのutide 齊藤さんが提案し、それを菊地さんが設計に組み込んだオーダーメイド。家全体の統一感の理由はここにもあります。
菊地さんのアドバイスで、ダイニングと外のテラスの床タイルを同じ幅のものに。こうすることで、外まで床が繋がっているように見え、空間に繋がりが生まれます。
使いやすいW洗面台。シックなグローエの洗面水栓に、少しだけ遊び心のある壁紙をチョイス。
暮らしを楽に、住まいを豊かに
住み心地を格上げする提案
印象的なインテリアアイテムに、ダイニングテーブルの上にある直径1メートルほどの大きな照明があります。
「自分では絶対に選ばない大きさ(笑)。でもこの空間にはこれくらいの大きさがなきゃと言われて…」と奥様。今では、家族がこの下に自然に集まってくる、H邸のアイコン的存在となっています。また、玄関にあるガラスのペンダントライトは、奥さまも一目惚れしたというアイテムです。玄関ドア上のガラス窓から入るやわらかな自然光に映え、その美しさに心癒やされます。「これがプロの目なんだって思います」。
子ども部屋の壁にはボルダリングが設置されるなど、家族全員への目配りも行き届いています。
菊地さんは毎日の生活に欠かせない家事動線も大切にします。
洗面所と棚でつながっている家事室。棚の上には家族の服を入れる一人一つずつのカゴと全員の洗濯物を入れるカゴが置かれ、洗濯物は家事室側から取り出して洗濯できるという画期的なシステムです。「家族それぞれのカゴに洗いあがって畳んだ服を入れておけば、各々が自分の部屋に持って行ってくれる。この部屋で、洗濯もアイロンもできて、家事が完結。畳んだ洗濯物がしまわれないまま散らかることもなくなり、ここにいると穏やかな気持ちになります」と奥様。
家族分の靴が収まるシューズクロゼットや飾るものに合わせて設計された飾り棚・キッチン脇のパントリーなど“必要な場所に必要なだけある収納”は「本当に便利で感心しました(奥様)」
H邸のメインビジュアルともいえる、大きな照明のダイニング。
オシャレなのに、使い勝手抜群のスマートな設計。洗面所に行かずとも、洗濯室から直接洗濯物を回収できます。
回遊性の良さから生まれる家族のふれあい
回遊性の良さから生まれる家族の一体感
菊地さんは「この家では回遊性を大切にしました」と言われます。
キッチンスペースの幅が広いので、同時に何人もキッチンに立てますし、料理出すときにも、右のダイニングと左にあるファミリースペースの両方向にスムーズに動ける。寝室から洗面所へは直接アクセスできますし、来客時にはリビングを通らずにキッチンや自室に行けるなど、あらゆる場所がリンクして、効率よく動けるよう設計されています。
「家族が多くても、人の流れが詰まることはなくてとても快適です」と奥様もうなずきます。
また、階段が家の真ん中に位置するため、「2階と3階で会話できるんです。家族が自室にいても、お互いの存在が感じられるのがすごくいいです。小さい子どももいますし、結局インターフォンは使わず声をかけあっていますね(笑)」と奥様。家族の気配が感じられる一体感のある構造に心地よさを感じるそうです。
家族の気配が感じられる一体感の秘密は、この回遊性。個室で一人のような落ち着きと集中、だけど人の気配を感じるという良いとこどり。ダイニング・キッチン・ご主人の仕事スペースが1つに。
キッチン横の談話スペース。ご主人曰く、「ここが我が家で一番のベストスポットと思っていますが、本能的に察した息子にいつも席をとられて私は中々居られません(笑)」
設計とインテリア「2人のプロに頼む」ということ
妥協と我慢のない、快適さを得られる家づくり
建築家との住まいづくりには「妥協と我慢が全くなかった」と言い切るご主人。この土地でできることを最大限に活かし、施主としての希望も最大限に受け止めてもらったと言います。
菊地さんが庭の代わりに提案した広々としたテラスも、H家の暮らしを変えてくれたアイテムです。リビングダイニングの床と連続性を持つように設計され、明るく広がりのある空間になっています。「以前の家の庭は暗く、ほとんど活用できていませんでした。今のテラスは、子どもがシャボン玉やプールなどの外遊びができる、開放的で明るいスペース。この空間が家に生まれたことで、在宅ワークが続いていても窮屈な気持ちを感じずに、居心地よく過ごせていられるんだと思います。
引っ越し直後はまだ小さかった木も育ってきて、外からの視線もほどよくさえぎってくれるようになりました。テラスはまだまだ発展途上。これからオーニングをつけて、テラスバーベキューをやってみたいです」と奥様。新型コロナウイルス感染症の影響で在宅時間が長かったこの数年、この家で過ごせてよかったとご夫妻は声をそろえました。
一緒にお料理しやすい、横長キッチン。お客様からキッチンが見えにくいのも何かと嬉しい設計。
中庭テラス。リビングから繋がる奥のウッドテラスにも繋がっています。
Q:これは本当に良かった!と思うものは何でしたか?
グローエの炭酸冷水機です。とにかく炭酸水が好きだったため、これは絶対!と考えて採用しました。冷たい炭酸水が水栓からでてくるのがいいですね。ペットボトルのゴミも減らせて環境面でも手間の面でも良さを実感しています。家族全員炭酸水が大好きなので、毎日大活躍です。
Q:実際に暮らしてみて、家族みんなが喜んだものはなんですか?
バブルのでるお風呂です。湯船につかると、本当に心地よくリラックスできて大満足。子どもたちも長風呂を楽しんでいるようです。
Q:暮らしてみてわかった!採用して良かったと思うものはありますか?
全館空調です。菊地さん曰はく、設計のときに全館空調の太いダクトが部屋に出っ張らないよう美しく収めるのが本当に大変でとてもご苦労されたそうですが、おかげさまで1年中快適に過ごせています。ありがとうございます!太陽光発電を導入したので、光熱費もそれほどの負担になっていません。
Q:家の中のお気に入りスペースを教えて下さい
ご主人: キッチンの隣にあるファミリールーム。子どもが勉強をしたり、軽食をとったりする万能のスペースです。ここに座って、キッチンを抜けてダイニングとテラスの方向に見える景色が好きなんです。息子がずっと座っていてどいてくれないので、なかなか座れないけれど(笑)。
奥様: キッチンが大好きです。ファミリールームで勉強をする上の息子を監視しつつ、下の子どもの食事を手伝いつつ、キッチンに立つことができます。当初は対面キッチンを考えていましたが、このキッチンは動線が良いし、スペースも広くて料理が作りやすい。ミーレのコーヒーマシンとこの空間が私の癒やしです。
Q:家づくりの成功の秘訣はなんですか?
菊地さんは、全てを決めてから工事を始めるのでなく、工事を進めながらも設備などを柔軟に考えてくださいました。シューズクロゼットに洗面台を設けたいという要望など、突然思いついたアイデアにもその都度対応していただけたおかげで、思い描いていた通りの家になりました。
取材後記
さまざまな人の思いとこだわりと工夫が、たくさんたくさん詰まったすてきな住まいでした。住まう人のことをとことん思いやり、住みやすく心地よく美しい住まいを作ろうと考え抜いた2人のプロフェッショナルの技と優しさに惚れ惚れ!(ライター 永井)
日頃、設計事務所をまわっておりますと、設計の先生から「インテリア性の強いアイテムは非常に難しくて、インテリアコーディネータさんのアドバイスがないと採用するのは難しかったかも」というお声を聴くことがあります。その逆もまた然り。H邸は菊地先生の細やかなお仕事が、密やかにインテリアの縁の下を担ってくださってるのだなぁとしみじみ思います。家の中で暮らしているだけでセンスが磨かれそうな、本当にステキなお住まいでした。H様、R F design office様、utide様ありがとうございました。(編集:森本)
撮影:近藤弘志