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2世帯・3世帯住宅は、住まいの本質が問われる
かつての日本では、親子はもちろん祖父母や時には曽祖父母まに至る4世代が同じ家に暮らしていましたが、戦後、結婚などを機に親とは別の住まいを構えることが当然のようになった結果、今や全世帯の圧倒的多数が親子だけか独り住まいとなっています。
核家族が増えたことで住宅需要が喚起され、安く提供される家が増えて世代を超えて住み継がれる家が少なくなったことが、今や日本全体で850万戸もの空き家が生まれる一因となっているのかも知れません。
2世帯・3世帯・4世帯住宅など多世帯住宅を数多く手がけてきた建築家の坪井当貴さんは「多世帯住宅は『ずっと住み継いでいきたい』と思ってもらえる家を創ることが重要」で、そのためには「住まいの本質を追求することが不可欠」と語ります。
デザインも機能も、時代を超えていけるものを
親世帯から子世帯・孫世帯へと住み継がれていく住まいが、堅牢で長年月の風雪に耐える必要があるのは当然ですが、坪井さんは「デザインも極めて重要です」と言います。
「子や孫が所帯を持つようになった時に『この家は古臭い』とか『格好悪い』と感じるなら、誰も住みたくないでしょう。 何十年後の目線にも耐えられるようデザインされた家であればこそ『住み続けたい』と思えるのです」
はるか昔に建てられた住宅なのに、今なお魅力的な建物は数多く存在します。「2世帯・3世帯などの多世帯住宅こそ、そういう建物でなければならないのです」
今を知り、未来を見通す
親や祖父母が同居する住まいの場合、家族ではありながらもお互いの距離感を保つことが必要ですし、互いの暮らし方の違いなどを汲み取った住宅設計が不可欠です。
その一方で、祖父母や親世代が足腰が弱った場合などに備えることも必要で、今現在の暮らしへの目配りをしつつ、将来を見据えて設計することも欠かせない。
堅牢性を確保した上で機能性や将来の事情を見越して柔軟性も持たせておく必要がある。
その上にデザイン性という要素を加えていくのですから、まさに「多世帯住宅こそ、住まいの本質を問われる」と言われるのも納得です。
住まいの本質を踏まえた多世帯住宅がもっと増えるようになれば、日本の住まいを巡る風景も魅力的になるような気がします。