住宅を設計する際に気を配っていることの一つに「建物の中と外をなめらかにつなげたい」という想いがあります。
ケミクリートを、玄関から続く部屋を土間に見立てて使うことが多いのですが、元々業務用として開発されただけに頑丈で、ラフな使い方にも耐え、それでいて味わいのある床面に仕上がるので気に入っています。
(©Wu Chia-Jung)
工場や倉庫・卸売市場などの大型施設を訪れたことがあれば、床がコーティングされているのにお気づきでしょうか。
むき出しのコンクリートは摩耗や衝撃・薬品などによって劣化しやすいので、耐久性・耐水性・耐薬品性・耐熱性など、その場所のニーズに応じたコーティング塗料を塗ることによってコンクリートを保護すると同時に、美観性をも向上させているのです。
産業用コーティング塗料(塗り床)の分野で圧倒的に有名なのが、エービーシー商会のケミクリートです。60年余の実績を誇る、日本初のエポキシ樹脂系塗り床材「厚膜型エポキシ樹脂系塗り床材ケミクリートE」。通常は、その耐久性から工場や倉庫の床に使われることの多い床材です。
その美観性やコンクリート保護性能などが注目されて、最近では住宅に使われるケースも出てきました。土間のような「外と内をゆるやかにつなぐ」スペースなどで、コンクリートの床を保護すると同時に、美しく「魅せる素材」として住宅にも使われているのです。
セロテープ(といえば、セロハンテープ)、ポストイット(といえば=糊付付箋)などと同様、商品名であるケミクリート(といえば=塗り床)と理解している人が、建築業界には少なくありません。一般には聞き馴染みがありませんが、そのくらい多くの場所で、当たり前に使われているポピュラーな床材です。
戦後間もない1959年に、日本初の樹脂系塗り床材としてエービーシー商会が開発した「ケミクリートE」は、コンクリートの床を保護するコーティング材として高度成長期に工場などの大型施設に導入され、今では用途や機能の異なる30種類以上のケミクリートシリーズが開発・販売されています。
元々は産業用として開発された歴史ある製品が、建築家などに着目されて住宅用という新しい役割を与えられる・・・ケミクリートの歴史に新しいストーリーが始まっています。
千葉学建築計画事務所
建築家・東京大学大学院教授 千葉学
住宅を設計する際に気を配っていることの一つに「建物の中と外をなめらかにつなげたい」という想いがあります。
ケミクリートを、玄関から続く部屋を土間に見立てて使うことが多いのですが、元々業務用として開発されただけに頑丈で、ラフな使い方にも耐え、それでいて味わいのある床面に仕上がるので気に入っています。
(©Wu Chia-Jung)