一目見ただけで、腰を下ろしてみただけで、一瞬で恋に落ちて一緒に暮らしたくなる―。
徳島県にある家具工房、宮崎椅子製作所(創業1969年)で作られているのは、そんな美しくも心地いい椅子。シンプルながら心惹かれるデザイン、木の香りまで漂ってくるような美しい木目、そして何よりも幸せな座り心地で多くの人を魅了しています。
宮崎椅子の大きな特徴は、工房で行われるデザイナーと職人によるワークショップ方式によるデザイン開発。家具デザイナーの村澤一晃と小泉誠を中心に、デンマークの巨匠、カイ・クリスチャンセンやミラノのデザインチームInoda+Sveje(イノダ+スバイエ)など優れたデザイナーが関わり、国内のみならず海外からも注目されています。
このスタイルでの椅子づくりが始まったのは1999年のこと。もともと家具メーカーの注文でスツールを作っていましたが、職人として納得できる椅子を作りたいと一念発起。デザイナーの村澤一晃(むらさわかずてる)さんと椅子づくりをしたことがはじまりでした。
「工房で一緒に作るのが村澤さんのスタイルだったので、それが自然と当社のやり方になりました」と教えてくれたのは代表取締役の宮崎勝弘さん。工房で思いを込めた椅子を作りたい。持ち続けていた願いが形になることは楽しくてたまらなかったといいます。
次第に技術が認められるようになったある日、カイ・クリスチャンセンの代表作「No. 42」チェアの復刻版制作の話が持ちこまれます。
「難しすぎてどこでもできないというなら、ぜひうちでやってみたいってうれしくなってね。(宮崎勝弘さん)」
そこからカイ・クリスチャンセンとのつきあいが始まり、徳島の工房で椅子を共同で制作しています。
Kai Kristiansen 代表作 No.42チェア
Kai Kristiansen (カイ・クリスチャンセン)
「89歳の今でも来てくれて、この10月の最終チェックでできあがったのがあれです」とシンプルで美しいアームチェアを指さして、宮崎さんは目を細めます。現在では、Inoda+Svejeのように「宮崎椅子と一緒に椅子を作りたい」というデザイナーから声をかけられ、制作が始まることが多い。
「人数増やして商品点数絞って量産することは可能です。でも、そこには価値が見出せません。デザイナーの発想力と我々の技術で、ひとつずつ納得のいく美しい椅子を丁寧に作り続けたい。作るのが難しいと言われるデザインほど形にしたくなる。そして、それが後世に“名作”と呼ばれるようになってね、何十年先にも作り続けられるものになったらいいなぁと思うんです。それでこそ開発してきた意味があるかなぁ。」
自身も“根っからの職人”である宮崎さんは終始穏やかな笑顔で、愛おしそうに椅子を撫でていました。
現在作られているアイテムは50以上。
基本的にセミオーダーの為、実物を確認するには徳島のショール―ムや全国の取扱店の展示を見に行くのがおススメ。(▶全国取扱い店一覧はコチラ)
どの椅子も、デザイナーの個性を宮崎椅子の技術ががっちりと受け止めた力強さと美しさを兼ね備えたものばかり。
「空間を圧迫せず、部屋を美しく見せる」ことにこだわった繊細で軽やかなデザインは、日本の家にするりと収まります。受注生産で作られており、ナラ、メープル、ウォールナットなど9~10種類の樹種、80種以上のファブリック、仕上げもオイルやウレタンなどから選べ、自分好みの椅子がオーダーできます。
INODA+SVEJE@IS lounge