プロの住宅レシピ 人と建築をつなぐ。家具のようにつくるキッチン
私は、家具は人と建築の間をつなぐものだと考えているため、住宅を設計する際もその発想が元になっています。
例えばそれは、キッチンと名付けた空間にただ調理設備を設置するのではなく、キッチンとして作り込んだ家具を建築内に配置するという発想であれば、より自由な建築をつくってクライアントに届けられるからです。
1.2枚目の「HOUSE-M/代々木公園の家」の様に、キッチンで求められる水や油ハネ防止の機能やリビングで必要になる飾り棚的な機能は、キッチンカウンターの周りを30cm程立ち上げることで、一つの家具として集約することが出来ます。おまけにその上の小さなカウンターは配膳や片付けの際にとても便利です。
その立ち上がりはリビング領域との緩衝帯になるので、建築としての間仕切り壁は不要になってきます。この様な機能家具の作り込みには効率や機能性が追求される飲食店やクリニックなどを設計した経験が活かされています。
また、その機能家具の配置によってどの様な動線や領域を作り出すかも重要で、例えば3枚目の「Flat-S renovation/フラット西早稲田 改修」では、飾り棚を兼ねたキッチン機能家具を玄関廊下の仕切りとして配置しています。
それによって生まれる裏の動線は、玄関脇のシューズクローゼットからパントリーと連続して、買い物帰りであればそのままキッチンへ入る便利な動線となります。
この様な選択肢がある回遊動線はクライアントにとても喜ばれますね。
写真4.5枚目の「HOUSE-H/房総の家」の食器棚も兼ねたキッチン機能家具は、リビングの大空間に独立して配置していますが、キッチン横に玄関とは別の勝手口を用意したので、買い物帰りの車や裏の畑で収穫した野菜の泥を外の流しで落としてから直接キッチンへ持ち込める動線が確保されています。
家具と建築の関係を考えることは日常生活の動線や領域とも深く関わってくるので、美しく心地よい暮らしが出来る住宅をつくる為のヒントになるかも知れません。