プロの住宅レシピ タワマンリノベで、老後にも優しい住まいへ
古市 淑乃
高層階に位置するタワーマンションの一室のリノベーション。
高齢のお客様の住まいのため、今回のリノベーションでは温かみと機能性を重視しました。
まず、お客様が今後杖や車椅子を使用する可能性も考慮し、すべてのドアを引き戸に変更。通常は開け放しにできるため、日常生活での移動がスムーズになります。
内装は元々が少しキラキラとした仕上がりで、お客様のお人柄から伝わる温かみがあまり感じられませんでした。また、お客様はインテリアやアートがお好きなので、そのセンスが活きるような空間になるよう考えました。
住まい全体のベースは手触りが良く、ブラウンの色合いが優しいナラ材で統一。引き戸は扉ごとに色を変えることで空間にアクセントを加え、場所によって少しずつ表情が変わるようにデザインしています。
今回のリノベーションでは、マンション特有の制約もあり、壁紙の仕上げに再度手を加えなければならない部分もありましたが、そうした箇所には質感の良い仕上げ材を直接使い、既存部分と新しい部分が自然に調和するようにしています。
優しい色味の木材は、色や質感、装飾など多様なものを受け止めてくれます。タワーマンションを思わせない、温かく優しい住まいとなりました。
Photo : Yosuke Tanaka