プロの住宅レシピ 戸建ての知恵を活かし、戸建てのように住まう集合住宅

添田建築アトリエ 一級建築士事務所
添田 貴之

都心に建つ3戸の長屋の集合住宅。

窓からの視線を遮るために設けた植栽。これ以上は立ち入れない雰囲気を感じさせる。

庭スペース。

窓は散りばめながらも、隣の住まいと視線が重ならないよう窓をずらすように配置。

都市部の集合住宅においても、プライバシーを守りながらも、開放的で豊かに暮らせるよう、集合住宅でありながら、戸建て住宅のような要素やアイデアを取り入れました。
一般的な集合住宅では、壁や仕切りで区切ることで住戸同士のプライバシーを守ります。「私の場所」「あなたの場所」と明確に決めすぎることで、外の自然を感じにくくなり、心理的な広がりは薄れ、閉塞感が生まれます。
この集合住宅では、オートロックなどセキュリティーによる物理的な領域分けをするのではなく、心理的作用を応用することで、「これ以上は入りにくい」と感じる状況を作っています。これにより、物理的な区切りにはないパブリックプライベートの関係が徐々に変わるグラデーションのようなものが生まれます。
通路や庭に至る動線では、通路や庭を共有しながらも、住人同士の視線が直接交わらないよう、中庭や窓の位置を微妙にずらし、視線が重なる部分には植栽を設けて視線を遮ります。
また敷地の対角線や長い距離を意識した設計と、適切な開口部の配置、視線の工夫によって、都心の狭い土地でも広さを感じながら開放的に暮らせます。
この住まいのアイデアは、集合住宅だけでなく、都市部の狭小地に建つ戸建て住宅でも活用できます。戸建てに限らす、集合住宅においても合理的で物理的な区切りに頼らず、豊かな暮らしを提案できたらと思います。

シェアする

採用されている製品

添田建築アトリエ 一級建築士事務所
添田 貴之

他の家づくりのアイデア

プロの住宅レシピ カテゴリ