プロの住宅レシピ 「大切なものを選んで、残す」低予算で叶えた理想の暮らし方

建築設計事務所 可児公一植美雪
可児 公一 ・ 植 美雪

住み手の生活の中で「本当に必要なもの」を突き詰めて残すことで、限られた予算で実現。

アルミサッシを縦に3枚連続させることで大きな大開口を実現。

洗面器

2階の床を一部バール状にすることで家の中に大きく光を取り込む。

子ども成長や環境にあわせて使い方も変化できるように設計。

こちらのお施主様は、当初ハウスメーカーへの依頼を検討していました。しかし予算の制約から実現は難しいということで、ご相談を頂きました。

住まいを作る上で希望と予算の乖離はよくあることです。そんな時は、丁寧にヒアリングを進め、プランニングの前に住む人にとって本当に必要なものを明確にすることから始めます。「家にあることが当たり前」という思い込みを外し、「あってもいいけど、なくてもいいものは作らない」という方針で、今回は話し合いを重ねました。 「あることが当たり前」という思い込みの中に、実は住み手の生活スタイルからみると、必要ではないものもあります。

こちらの住まいの場合、例えば「窓の数」です。一般的には各室に窓を設けますが、予算から逆算すると採光通風のためだけの小さな窓しか設けられません。予算内で、より効果的に窓の機能を増幅させようと、この住まいでは窓を3か所に集約しています。大開口を大きなサッシではなく、一般的なアルミサッシを縦に3枚連続して設けることで、壁一面がガラス張りとなり大開口のような窓を作りながら、大幅なコストカットができます。
空間を仕切る壁や扉の代わりには、カーテンを採用しました。これにより、光や風通しを損なうことなく、空間を自由に使えます。必要に応じて空間を大きく使えたり、プライバシーを確保できたりと、多用途に対応できます。 さらに、床の一部はルーバー状にすることで家全体に光と風が流れ込む設計です。
玄関では、玄関室や高価な玄関扉を設ける代わりに、リビングに接続したサッシ窓を玄関として転用しました。昔の住まいのように、シンプルなサッシ窓を出入り口にすることで、実用的でありながらコストも抑えられます。

この住まいのように、コストと快適さを追求するための丁寧なヒアリングと話し合いで、必要な要素を極限まで圧縮し、多角的な視点から工夫することができます。新築と理想の暮らしを「諦めなくてよかった」と言っていただける住まいとなりました。

Photo : 藤井浩司/TOREAL

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ここが私の評価ポイント!
実験用の洗面器を家庭の洗面台に採用しています。シンクが広く作業がしやすいので、子育て世帯にもおすすめです。
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