プロの住宅レシピ 「暮らし」と「住まい」の変化を楽しむ、団地リノベーション

南向きの広いバルコニーを持つ団地の一室をリノベーションしました。住戸の形がほぼ正方形の平面形状をしているのが特徴で、もともとはその空間が細かく壁で仕切られていました。
今回のリノベーションでは壁を取り払い、全方向に広がりを感じられるワンルーム空間とし、造作家具を
配置して、行き止まりを感じずに家中をぐるぐると歩き回れるプランに再構築しました。
空間がどこまでも続いていくような楽しさのある家を目指しました。
家族が最も長く過ごす空間となるリビングを、外の環境とつながりを感じながら広がりのある空間として使えるようにしたいと考え、バルコニーに面した場所を全てリビングとしました。
造作家具は天井まで届かない180cm程の高さとしました。ラワン合板で造作した家具は本棚や収納であり、寝室や子供の遊び場、キッチンなどの場所を作っています。頭上で光や風が抜けるため、開放感を損なわずにそれぞれのスペースが生まれます。
今後の生活環境の変化を見越し、将来的にリノベーションを重ねる際にも柔軟に対応できるように、いつの時代でも手に入りやすい素材を造作家具に使用しました。
床は既存のフローリングを一部そのまま使い、設備の都合で床を開けた部分は補修し、少し異なる色同士が混在するつぎはぎの床の仕上げとしました。補修箇所は部分的に住まい手のご家族と一緒にペンキで塗装した箇所もあります。
天井はコンクリートの梁をむき出しにした部分と、既存のクロスをそのまま活かした部分を混在させることで、素材の対比を生かしたデザインとしました。リビングの天井は既存のクロスを剥がし、コンクリートの躯体を露出させました。
すべてを刷新するのではなく、以前の空間の歴史を受け継ぎながら、住まい手が自分の家として愛着を持てる住まいへと更新しました。完成形として終わらせるのではなく、暮らしに合わせて変化し続ける可能性を大切にしたリノベーションです。
Photo : Ken’ichi Suzuki