プロの住宅レシピ 暮らしとセンスが馴染む、余白ある住まい

この住まいは、週末に過ごすための家として計画しました。
施主様は古道具屋を営まれており、センスの良い家具やインテリアを多くお持ちです。新しい住まいは、これらの家具や雑貨が映えるよう、あえてすっきりとしたプレーンな空間としました。
施主様は少し影のある落ち着いた雰囲気を希望されていたことから、壁や床、天井の仕上げはグレーを基調に主張しすぎないトーンでまとめ、暮らしの中で少しずつ色づいていく「余白」のある設計を目指しています。
床には、センチュリーボードとよばれる硬質木片セメント板を採用。セメントと木を固めた均質すぎない質感で、独特の素材感があります。年月とともに味わいが増していくのも魅力のひとつです。ガラス塗料を施すことで、汚れても拭き取りがしやすくなるよう配慮しました。
住まいの中でもうひとつ大切にしていることは、光と陰影のコントロールです。
玄関側は少し暗がりですが、家の中心にある吹き抜けの階段スペースからほんのりとした明るさが住まい全体に広がる設計としました。ただ単に明るい空間をつくるのではなく、動線や視線の流れをイメージしながら、窓を配置しています。
天井の高さも、単に高ければ広く感じるというわけではなく、大切なのは空間のリズム感です。開放感と籠り感、高低差や光と影を意識することで、住まいに奥行きを生み出します。
リビング正面の大きなガラス窓の向こう、庭に植えた木々が将来的には目隠しになる予定。周辺の視線を気にせずにすむ、穏やかな空間になることでしょう。
現在は週末の家として使用されていますが、将来の住まいになることを前提としています。シンプルな空間構成は暮らしの変化をおおらかに受け止め、経年変化を楽しめる素材の採用で、暮らしとともに味わいが深まる。そんな住まいの在り方を大切にした設計です。
Photo : 吉村規子