プロの住宅レシピ 小さな居場所がつなぐLDK

田野 宏昌・友藤 桂子
マンションの一室をリノベーションした住まい。
主室となるLDKは、リビングダイニングであり、子どもの遊び場であり、それぞれの居場所でもあります。限られた面積のなかで「どのように居場所をつくるか」…閉じた個室ではなく、小さな居場所がゆるやかにつながりながら一室空間を構成するアイデアが詰まっています。
例えば、空間の中心に置いたローキャビネットや窓辺のベンチは可動式で、場所や向きを自由に変えることができます。囲むように配置することで落ち着くスペースにも、端に寄せることで開放的な空間にもなり、気分やシーンに合わせて自在に変えられます。
キッチンは壁付けのI型とし、インテリアの一部として見せるデザインとしました。キッチンは水や汚れに強いメラミン材を使用しながらも、引き出しの取っ手を無垢のウォールナット材にすることで、家具のような印象です。食器や器具もリビングの一部として考えることで、空間全体の一体感が高まり、居場所のひとつとなっています。
開口部はもともと全面が掃き出し窓でしたが、あえて一部に腰壁をつくり格子窓のようなデザインにすることで、ベンチに腰掛けて外を眺める居場所として再構成しました。マンション特有のアルミサッシの存在感を無くすため、サッシ框の前には木の柱を立て、床を少し上げて隠し框にすることで、木製建具のような木質空間の雰囲気をつくりだしています。
限られた面積だからこそ、多様な居場所と空間のつながりを丁寧に設計。そこに遊び心が添えられることで、「暮らしを楽しむ家になった」と感じています。
Photo : Yohei Sasakura