プロの住宅レシピ 生活リズムの違う二世帯に寄り添う、音と動線に配慮した住まい

松永 康一朗
1階、2階で世帯を分ける重層タイプの二世帯住宅の生活で気になることのひとつに「2世帯間の音」が挙げられます。生活リズムや時間帯が違う場合はなおさらです。
そこで、この二世帯住宅では、親世帯の寝室を西側に、子世帯の寝室を東側に配置することで、生活リズムの違う二世帯が快適に過ごせるよう設計しました。木造住宅ではどうしても音が伝わりやすくなるため、親世帯の寝室の真上には、夜に音が出にくい仕事部屋を設け、暮らしの時間帯のズレの解消を行いました。世帯を隔てる床は遮音材を入れるのも有効ですが、石膏ボードをフローリングの下に敷き込んだり、梁を太くして振動を減らすだけでも効果を随分と感じられます。また1階天井に大きな穴を開けるダウンライトは設置しないようにしています。
親世帯住まいでもうひとつ工夫したのが、水回りの計画です。トイレ・洗面・浴室といった水回りを寝室から視線の届く範囲にまとめ、移動の負担を最小限に抑えました。
洗面所には手すりを設けていますが、施設のような雰囲気にならないようデザインに配慮。ベンチなど気分転換ができる場所も設けました。
トイレは車椅子対応を想定して計画しましたが、通常のトイレよりも広さが必要なぶん、扉を方面に大きく開く引き戸とすることで、廊下がトイレの一部として機能。限られた面積を効率的に使っています。
浴室は、南側に大胆に張り出した形で設計することで、明るさと開放感を確保しました。
生活リズムが異なる二世帯に寄り添う、やさしい住まいとなりました。