プロの住宅レシピ 光と影でさらに魅力的に!築37年のアール天井リノベーション

木村 寧生
築37年の住まい。
建築家とともに建てた家を、次の世代へと引き継ぐため、広さを活かし、人が集う住まいへとリノベーションを行いました。
この家が建てられた1980年代後半は、住宅に「都市の喧騒から守られた静かな内向きの空間」が求められていた時代で、窓は小さく、外とのつながりはあえて希薄に設計されていました。現代のように「外を感じる住まい」とは対照的ですが、その限られた開口から入る光や影の“変化”をどう楽しむかが設計の鍵となりました。
この家はアールの天井が特徴的でした。
以前は天井ではスリット部分にライン照明があり、アールの天井に十分な光が届かず、陰が目立っていました。この天井の良さを引き出すため、面全体を光らせることで、天井の上から下まで光のグラデーションが生まれるような照明計画を行いました。さらに天井にはポリカーボネート板を設置することで、照明の光が反射し、壁一面が照明のような役割を果たすため、ハイサイドライトのような効果が生まれます。
壁で仕切られていたキッチンとダイニングは、天井のデザインを引き継いだ形で一体化。また、日当たりの良い窓際の天井には凹凸のデザインを施し、そのラインをリビング側へと延ばすことで、リビングの一角として居場所となるよう変更しました。
もう一方の窓では、障子だった窓を、半透明のポリカーボネートと変光フィルムに変更。日光が入ると淡く紫がかった光が差し込み、ステンレスのキッチンに反射。カーテンの色味とも呼応し、空間に幻想的な印象を与えます。
以前の住宅の造形を活かしながら、現代的な感覚と機能をさりげなく取り入れたリノベーションでは、空間の魅力を丁寧に引き出し、人が自然と集いたくなるような「場」へと更新しました。