プロの住宅レシピ 「はたらく」と「暮らす」をつなぐ中庭

大西 慶明
在宅ワークという働き方の中で、「はたらく」と「暮らす」をどう共存させるかは重要なテーマです。
この住まいでは、中庭を介して二つの空間が緩やかにつながり、ほどよい関係性が保てるよう設計しています。たとえば仕事中、ふと中庭越しに子どもの様子が見えたり、子どもに仕事をしている風景を見てもらえるといった環境や関係性を大切にしました。
リビングは床を一段下げたビットリビングで、2.16メートルほどの天井高と、珪藻土の壁の質感が合わさることで洞窟のように包まれた感覚があり、自然と落ち着ける空間となっています。
一方、仕事部屋は勾配天井を用いた抜けのある空間で、狭さを感じず快適に過ごせます。
中庭を介して二つの空間に対比を持たせたことで、一日の生活の中で「はたらく」と「暮らす」のメリハリがありながらも、住まい全体としては緩やかにつながり、リズム感を感じる設計です。
リビングには階段や窓際の段差を活かして、小さな居場所を点在させています。こうした自然と集まりたくなる仕掛けにより、来客時には皆がちょうどよい距離感で囲むように座り、談笑が弾みます。
仕事で疲れたときは、ふと中庭やリビングに目を向けて気持ちをリセット。週末には中庭でお茶を飲み、昼食を囲む…そんな穏やかな時間の積み重ねが、暮らしの質を高めてくれます。
中庭を中心に、「暮らす」「はたらく」そして「集う」が交差する、新しい暮らしを提案する住まいとなりました。
Photo : 仁田 慎吾