プロの住宅レシピ 植物と暮らす ~家族の“好き”が重なる住まい~

細い通路の奥に住居スペースが広がる旗竿地に建つ住まい。
「植物と一緒に暮らせる、広くて日当たりのいい住まいにしたい」。これがご夫婦の最初のご要望でした。旗竿地に住まいと駐車場、ビニールハウスを設けたいということもあり、詰め込みすぎると無理が出てしまいます。そこで「植物とどう暮らすか」を軸に土地をじっくり見つめ、「植物が育ちやすい場所」「気持ちが良い場所」…など、土地に素直に従い、 無理に工夫を詰め込まないことで、無理なく、長く暮らせることを大切に設計をしました。
住まいでは、「植物との暮らし方」が重要でした。
特に温度管理や日照条件など、細やかな環境調整が欠かせない植物の環境と、暮らしをどのようにつなぐか…。そこで、2階では屋内と屋外の間に「バッファゾーン」を設けることで、植物が育ちやすく、かつご家族にとっても心地よい温熱環境をつくりました。開口部は、気密性を高めるため、2枚のサッシで構成。湿度や温度の調整がしやすく、植物にとっても快適な環境を整えています。
1階のリビングに沿って設けたL型の広い土間スペースでは、植物の手入れを行ったり、くつろいだり、子どもたちが遊べたりと、家族が思い思いに過ごせる場所です。
この土間空間に設けたポリカーボネートの扉は、すべて開けると屋外のように。閉めると屋内の一部となり自由に調整できます。さらにポリカーボネートのおかげでカーテンなしで快適に暮らせます。
1階リビングと2階植物スペースをつなぐ階段には、読書が好きな奥様のために大きな本棚を設置。ご主人が植物の手入れをしている横で、奥様が本を読んだり、お子さんが遊んだりと、近くにいながらも思い思いの時間を大切にできます。
植物を育てるご主人、本を愛する奥様、遊び盛りの子どもたち…それぞれの時間を大切にした日常を受け入れる家づくりで、好きと暮らしを丁寧に実現した住まいです。
Photo : 冨田英次