プロの住宅レシピ 中庭で暮らすという選択──視線がめぐり、ガラスが編む回廊空間

YIA イシウエヨシヒロ建築設計事務所
石上芳弘

家の中心に据えられたキッチンからは、回廊・リビング・ダイニングと全方向に視線が抜け、開放感ある見透しの良い構成に。

外観にも使われたストライプの壁材が外部から内部へとつながり、空間に視線の流れをつくる。造作カウンターの壁にはお施主さんの希望でベネチアンタイルを採用し、上質なアクセントに。

外からの視線を遮ることで、中庭にはカーテンを設けず、自然光をそのまま受け止める設計に。時間とともに移ろう影が、暮らしの中に豊かな表情を添えていく。

四方をガラスで囲んだ中庭には、光や緑、そして揺れる影が静かに差し込む。コーナー柱を設けない構造により、視線の抜けと透明感が際立ち、巡る回廊が自然とつながる動線を生み出している。

静かで落ち着いた佇まいの外観は、開かれた内部とのコントラストが際立つ。外壁に施されたストライプの意匠は、内部へと視線を導く静かなリズムを描き出している。

愛媛県松山市の密集した住宅地に佇む、全面ガラス張りの中庭をもつ住宅。

緑が映える外庭と、デッキで内部に繋がる中庭に挟まれたリビングダイニングは、外部からの視線を気にせず、日常的に自然の豊かさに包まれて過ごせる空間となっています。

プライバシーを確保するため、外部はしっかりと閉じながら、内部には敷地の広さを活かして、開放感のある全面ガラスの中庭を計画。
視線を遮ることなく、光や緑が暮らしに溶け込む構成が生まれました。

住宅の計画が進むなかで、「子どもが安心して、自由に遊び回れる家にしたい」という想いが設計に込められていきました。夏には外庭に大きな子ども用プールを出し、近所の子どもたちが集まるにぎやかな場所に。
ガラス張りのリビングからは、中庭や外庭を広く見渡すことができ、日々の暮らしの中で、自然と子どもの様子を見守ることができます。

キッチンは、そんな暮らしの中心にそっと溶け込んでいます。
中庭と外庭をつなぐ動線の途中にあり、料理をする手元には、自然の光と空気、家族の気配がゆるやかに流れ込みます。外に開かれ、内に守られるようなその場所は、お母さんにとっての“自分の居場所”としても静かに機能しています。

家事の拠点でありながら、家全体の動きがめぐり、やわらかく交差していく。
キッチンは、そんな循環の起点となる空間です。

外庭に茂る緑は、ふと視線を向けたときにそっと揺れ、やわらかく気持ちを解いてくれる。
ロの字にめぐる構成と、視線が巡る回廊、そして内に開かれた中庭へと、自然と意識が導かれていく。
そんな視線と空間のめぐりが豊かな暮らしをそっと支えています。

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