プロの住宅レシピ ラナイを実現する、暮らしと設計の確かな対話

千葉県の南房総の海辺の町に建つこの平屋は、ラナイ──ハワイ由来の屋根付きのデッキ空間──を住まいの中心に据えたサーフィンを愛する大家族のための住宅。
芝生の庭やバレルサウナ、犬たちと過ごす時間も含め、外での暮らしをそのまま日常に取り込めるよう計画され、家族や仲間が集う開かれた居場所がそこに生まれました。
設計の際には、土地探しの段階からお施主さんと計画。まず最初にハザードマップで浸水の可能性を確認し、風向きや塩害にも配慮した屋根形状と素材を選定するなど、「夢のある暮らし」を支えるための“見えない準備”を丁寧に重ねています。
台風、塩害、局地的豪雨といった自然環境と対話するように、屋根や外壁、塀の構造にまで対策が盛り込まれているのです。日常では意識されにくいものですが、その判断と技術は確かに暮らしの基盤を支えています。
内部は杉板に包まれた大屋根の下に、開放感と安心感が共存する大らかな空間。
細部には頑丈なスチール製の手すりや薪ストーブのガードなど、家族や犬が自由に動き回れるような安全性の工夫が施されています。天井をすっきりと設計することで、子どもたちがボールを投げて遊ぶ日常にも自然に対応します。
大家族の賑やかな日常と海上がりのラフな動線を受けとめるために、空間には大胆かつ合理的な工夫も。
キッチンはカフェテリアのようにカウンターを介して会話が生まれる構成とし、調理と団欒がひとつながりになる設計に。
さらに洗面台には、理科の実験室で使われる大型シンクを採用。
子どもやサーファーたちがどろんこで帰ってきても気兼ねなく使えるタフな仕様が暮らしを支えます。
ラナイのある暮らし。それは単なる開放感ではなく、外部環境とつながりながら安心して過ごすための確かな設計の対話から生まれているのです。