プロの住宅レシピ 陽だまりを眺める暮らしの余白──プールのある優雅な住宅

河内 真菜
神奈川県、相模湾を遠望できる緑に囲まれた崖地。扇形の変形敷地に建つこの住まいは、ご夫婦とお子さん2人の4人家族の「別荘のように暮らしたい」そんなご要望から設計は始まりました。
建物は敷地の高低差に寄り添いながらスキップフロアで構成。
駐車場から地下音楽室、ロフト、テラスへと、空間のリズムが折り重なります。
段差に導かれて視線がゆるやかに移ろい風景が少しずつ切り替わっていく。その流れが日常に旅のようなシークエンスをもたらします。
外観は外からの視線を抑えながら、内に向かって大きく開く設計。
深く張り出した軒が光をやわらげ、穏やかな陰影の中に陽だまりがそっと浮かび上がります。
光を直接に浴びるのではなく、眺めるという落ち着いた距離感が心を静かに整えてくれるのです。
中に入ると庭やプールに向かって大きく開かれた構成に。
浴室やテラスも屋外とゆるやかに接続し、リビングを土間のように仕上げるなど、内と外の暮らしが連続する仕掛けが随所に施されています。
仕上げにはモルタルや無垢材など、経年変化を楽しめる素朴な素材を選択。
空間の色数を抑え、住まいに“70%の完成”という余白を残しています。日々の暮らしの痕跡がそこに足され、家族の手で育っていくことを前提にデザインされています。
空間を仕上げすぎないことで、人と光と時間が入り込む余地を大切にするという哲学がそこにはあります。
視線の抜けや動線の連なりが家族それぞれに心地よい距離感を与え、穏やかなつながりを育んでいく。
その“ゆとり”が家族にとっての心の広がりとなっていきます。日常に自然の豊かさと心の余白をもたらす心地の良い居場所です。