プロの住宅レシピ 沖縄の風が抜ける、3つの箱の住まい

山口瞬太郎
沖縄の住宅街に建つRC造の住まいは、大きく三つの箱で構成されています。細長い棟には水回りを集約し、左のボリュームは1階が事務所、2・3階が居住スペース。もう1つのボリュームには階段や倉庫を配置し、それぞれの機能を明快に分けた構成です。
3つの箱の中央には、壁ではなく窓を介して風が通り抜ける空間が設けられています。この“風の間”は特定の用途に縛られず、リビングやダイニング、打ち合わせスペースなど多目的に利用できる自由度の高い場。南を向いたこのスペースは、太陽の動きや風向きを考慮し、季節や時間帯に応じて快適さを保つ設計となっています。
日常では基本的に窓を開放し、南から北へと抜ける風をそのまま暮らしに取り込みます。冬季は一方を閉じて室内環境を調整。自然の動きに合わせた柔軟な使い方が可能です。外観はRC造の無駄のない造形でまとめつつ、木製建具や無垢材を用いることで、内部には柔らかな質感と温もりを添えています。
自然環境と一体となるための工夫を随所に施し、流れる風や移ろう光を暮らしの中で感じられる、普遍的な価値を備えた住宅です。