プロの住宅レシピ 桜と水辺を住まいに迎える──高みから景色を望むワンフロアの暮らし

新潟県上越市、高田公園の桜並木に面した敷地に建つ4人家族の住まい。
家づくりのきっかけは「いい土地を見つけたので見てほしい」というお施主さんの言葉でした。日常に桜や水辺の風景を取り込みたいという願いがこの住宅の出発点となっています。
敷地は約50坪とコンパクトで、地方暮らしに欠かせない車2台分のスペースも必要でした。そこで生活空間をすべて2階に集約し、1階両脇にカーポートを組み込む「宙に浮いた平屋」という構成を提案。
北側全面に設けた大開口からは桜並木が一望でき、柔らかな光が室内全体を包み込みます。南側の窓は冬の日射を取り込み、快適な温熱環境を実現しています。
内部は杉の床と桧の羽目板天井、漆喰塗料の壁で構成。
すっきりとした素材感が桜や緑と呼応し室内に澄んだ空気をもたらします。
リビングには畳脇の造作ソファなど小さな居場所を多く設け、家族が思い思いに寛げるように計画されています。
キッチンは造作とし、お施主さんと相談をしながら日々の使い勝手や空間との繋がりを丁寧に調整しています。
1階は子ども部屋とホールで構成し、将来は解体してゲストルームに転用できるように計画。公園との繋がりを意識した柔軟な設計です。
外観には赤みのある杉板を無塗装で仕上げ、やがてグレーへと変化する経年美を受け入れることで、風景とともに成熟していく住まいを目指しています。バルコニーもまた桜を間近に感じられる室内の延長のような居場所となっています。
完成後、ご家族は「人目を気にせず桜と暮らせる」と語り、暮らし心地にも大きな満足を寄せているそうです。
ブラインドを上げ放した窓辺には四季が映り込み、木の上に浮かぶような住まいは、日常を風景と一体化させる美しい暮らしを実現しています。