プロの住宅レシピ 2坪の中庭から広がる、小さな平屋の豊かな暮らし
佐藤 圭真
台形のような不整形地の小さな敷地。
「小さな敷地でも中庭のある住宅をつくりたい」という要望からこの住まいの計画が始まりました。
敷地条件から単純な矩形の中に中庭を収めるのは難しかったため、住まい全体を「キッチン・居室・水まわり・収納」の4つのボリュームに分割し、中庭を囲むように配置しました。それぞれの空間は一部の辺を共有し合うことで廊下をほとんど設けず、空間同士が自然につながる構成に。各空間が中庭に面することで、光や外の気配を身近に感じられます。
さらに、中庭のまわりをぐるりと回遊できる「回帰性」を持たせることで、家の中に入ると全体を見渡せない迷路のような感覚が楽しめ、面積以上の奥行きと広がりを感じます。
わずか2坪の中庭では、四季折々の変化を楽しめます。雨の日は「家の中で雨が降っている」ように、雪の日は「部屋の中に雪が舞う」ように、日常に豊かな景色を映し出します。
さらに、中庭を介してガラス越しに向かい合う部屋から家族の様子が感じられ、住まい全体に楽しい空気も流れます。
内装では、時間の経過とともに色合いが深まるラワン合板と、経年変化が少ない白のビニールクロスの2種類の素材に絞って採用しました。壁の仕上げを高さ2mまではビニールクロス、その上部をラワン合板とする「切り返し」を住まい全体に統一。水平ラインが各空間をつなぎ、住まい全体に一体感を生み出しています。
この「変わるもの」と「変わらないもの」を組み合わせることで、四季の移ろいや経年の変化を暮らしに取り込み、新たな発見と楽しみを重ねていける住まいとなりました。