プロの住宅レシピ 景色と時間をデザインする──窓と光が導く健やかな暮らし

木戸脇匡志建築設計事務所
木戸脇 匡志

天井はシナ合板とホワイトウッドの竿口で直線のリズムを強調。濃い赤色のニヤトー木製サッシで仕上げた4つ並んだ窓からは公園の景色が広がり、開放感を実現している。

キッチンは調理しながら子どもたちを見守れるオープンな視線計画。窓外には積雪に対応したコンクリートを土台にした木塀を設け、開放感と耐久性を両立。

以前から子どもたちに親しまれた和室を導入し、客間や遊び場として多用途に活躍。縦滑り窓の納まりやデザインを細かく設計。横桟を天井の直線リズムに呼応させることで、和の落ち着きと全体の統一感を演出している。

断熱材

中廊下にはピアノスペースを確保しFIX窓で外光を柔らかく取り込む。通風は板戸で調整する独自仕様。桟の細さや納まりを一つずつ設計し、構造とデザインが一体化した仕上げ。

照明

室内の全照明に導入した音声操作できるシステムはお施主さんのご要望から実現。体内リズムに呼応した照明調節が快適な生活をもたらし、健康管理にも効果的。

北海道札幌市。お施主さんご夫婦と3人のお子さんのために計画された平屋の住宅。 お施主さんの希望は、住戸棟と車庫棟を2つ並べた配置計画、風水に配慮した四角い間取り、そして南側に広がる公園の景色を取り込むことでした。

直線的でシンプルな構成を望まれたことから矩形を基調に整え、公園に隣接する立地を最大限に活かして公園側に庭を計画し、各室からの庭や公園との繋がりを軸に進められました。

この住宅の最大の特徴は窓。公園側に設けられた南洋材のニヤトーの木製サッシは、室の用途に応じて3種類設計。
LDKに面する窓は、間口7.2mのヘーベシーべ窓で、両端をFIX、中央を開閉式とすることで操作性と景色の連続性を両立。

客間に面する窓は、腰掛け高さの出窓空間をヌックとしており、子どもたちの遊び場や庭を眺められる読書スペースとして機能しています。横桟を特徴としたルーバー網戸もニヤトーで造り、日射の遮蔽と通風の役割をもちます。

寝室に面する窓は、庭を眺めるためのFIX窓と通風のために板戸を引き上げて確保する仕掛けを設計しています。

窓の位置とサイズは外装材の道南杉の板幅と割付で細かく決めています。大工さんの高い精度により綺麗に仕上がりました。桟の細さや横桟のラインは一つひとつ図面を描き込んで調整され、既製品では得られない精度が空間全体の美しさを支えています。

もう一つの軸は照明。サーカディアンリズムに基づく自動調光調色機能を備えた照明を全室に導入し、お施主さんの希望であるスマートな暮らしを実現しています。

食卓の料理を美しく見せるなど暮らしのシーンに呼応して音声操作やスマートフォン制御まで細やかにカスタマイズ。光のグラデーションが家全体の表情が豊かに広げます。

完成後の暮らしは、キッチンに立てば広い庭とリビングやダイニング、客間で過ごす子どもたちの遊びや勉強の様子が一望でき、間口を敢えて広めに計画した中廊下のピアノスペースにも気配が届きます。

夏はエアコン一台で全体が涼しく、冬は床暖房だけで心地よい断熱性能が家族の時間を支えています。 窓が景色を導き、光が時間を整える──快適な暮らしがデザインされた住まいです。

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採用されている製品

スタイロフォーム(断熱材)|デュポン・スタイロ株式会社
デュポン・スタイロ株式会社
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木戸脇 匡志
ここが私の評価ポイント!
断熱材にはデュポン・スタイロの「スタイロフォームFGを採用。
当時の北海道の基準ではUA値0.46程度で十分とされる中、本計画では外皮性能を極限まで高め、UA値0.20という最高レベルの断熱性能を実現しています。
基礎・壁・屋根をぐるりと外側から包む外断熱工法により、壁厚100mm、屋根150mmという通常の倍以上の厚みを確保しています。施工現場でも、断熱材を張った後は窓が開いていても外気温よりひんやりとした快適さが体感できたといいます。
形状安定性のあるパネル材のため、従来のグラスウールに比べてカットや施工性が高いのも利点です。一方で注意点としては硬質発泡材ゆえに音が響きやすく、屋根に当たる雨音を抑えるためにはロックウールなどの吸音材を併用する工夫が必要です。
初期コストは40〜50万円程度だが、冷暖房負荷を大幅に軽減し、省エネ性・耐久性を長期的に見れば十分に有意義な選択といえます。
採用製品
照明器具|遠藤照明
遠藤照明
木戸脇匡志建築設計事務所
木戸脇 匡志
ここが私の評価ポイント!
照明には遠藤照明の調光調色システム「Synca」を室内の全照明に採用。
ダウンライトや間接照明に加え、ダイニングのペンダントライト(yamagiwa製)にも専用電球を組み込み、全照明をSyncaで統一。
音声やスマートフォン操作で管理したいというお施主さんの希望により高い利便性を追求することになりました。 健康管理の側面もあり、サーカディアンリズムに基づき、朝は青白い光、昼は柔らかな光、夜は温かみのある光へと時間帯に応じて自動調整されます。
通常の照明が対応する色温度が約2700〜5000K程度であるのに対し、本製品は1800〜12000Kまで幅広くカバーし、真っ赤な色から真っ青な色まで自在に演出できる点が大きな特徴です。
住宅導入例がほとんどなく、担当者の方も初めての試みだったため、一緒に使い方を模索しました。 最適な色温度や音声操作の呼びかけ内容を現場で細かく操作したため初期設定には丸2日を費やすこととなったのが思い出深いです。
通常の4〜5倍のコストは掛かりますが、暮らしに合わせた光環境を自在に操れることは大きな魅力です。Tunable LEDZを選べばコストを抑えられ、システムの導入だけを考える場合は機能として十分です。
採用製品
木戸脇匡志建築設計事務所
木戸脇 匡志

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