プロの住宅レシピ 精米所ならではのスケールを活かす、大胆で繊細な住まい

精米所と倉庫をリノベーションして誕生した住まいは、モデルルームとしても活用されています。かつてのスケール感や素材を生かしながら、暮らしやすく心地よい空間へと再生した住まいです。
もともと建物の構造状態が万全ではなく、耐震性に不安がありました。そこで、既存の柱の内側にもう一本新たに補強柱を立ててつなげることで、現行法規程度の耐震強度を確保しています。新しい梁は古い梁の質感に合わせることで、補強でありながらデザインの要素としても活かしています。さらに、インナーフレームの一部をあえて見せ、補強した柱の一部を真壁として現すことで、空間にアクセントを与えます。
この住まいの中心的な存在は、キッチンとダイニングが一体となった全長4メートルの大きなカウンターです。
キッチン部分の床を1段下げることで、キッチンとダイニングの高さの違いを解消。人造大理石を使った継ぎ目のない美しい仕上がりで、食事の場としてだけでなく、キッチンスタジオのように人が集まったり、打ち合わせにも使えるなど、多用途に活用できるデザインとしました。
約7メートルのスパンを柱なしで支える、倉庫ならではの大きな梁もこの建物の特徴です。このスケール感を活かすために吹き抜けを設け、梁をダイナミックに見せるデザインを採用しました。木材は地元・九州産を中心に用い、床材には幅30cmのフローリングを使用するなど、倉庫のスケールを引き立てる素材選びをしています。
大工や家具職人によって造作した家具は、梁の力強さに負けないよう大ぶりなデザインに。ベンチや棚は座る・収納する・飾ると多用途に対応できます。
倉庫の大胆さを生かしながらも、暮らしに寄り添った工夫を積み重ねた住まいは、リノベーションならではの魅力が詰まっています。
Photo:山内 紀人