プロの住宅レシピ 制約をデザインに変える、家族がつながる住まい
荒井 海太郎
防火地域に建つ三階建ての木造耐火住宅。
限られた敷地条件や厳しい防火基準をクリアしながら、「家族のつながりを感じたい」というご希望を叶えた住まいです。
個室は必要最低限のサイズに抑え、あえて3階の廊下にゆとりを持たせました。廊下には読書や勉強、ちょっとした作業ができる共有スペースを設置しています。さらに足元の壁をなくし、下階の吹き抜けのダイニングとつながることで、階が違っても声や気配が届き、家族の存在を感じられる構成としました。
在宅ワークが中心の奥様は「籠るのではなく、家族の気配を感じながら仕事をしたい」と希望されました。そこで、暮らしの中心であるLDKにワークスペースを隣接させ、仕事と日常が穏やかに共存する空間を実現しています。
この住まいのもうひとつのテーマは「防火地域の木造耐火建築」です。
耐火木造では、プラスターボードを室内外に二重張りするなど特殊な仕様により、通常より壁の厚さが増すため、暮らしのスペースが狭くなります。そこで限られた空間の中で有効スペースを最大限に確保し、デザイン性と住まい全体のバランスを取りながら快適さを追求しました。
お客様がともに作り上げる住まいだからこそ、この住いのように環境や土地の制約を逆手に取り、デザインへと落とし込むことで、暮らしに反映させることができます。
Photo:Nacasa & Partners Inc. Osaki Emon