プロの住宅レシピ 好きなものと暮らすための“余白”をつくる、ぐるりと光に包まれた住まい

宮原輝夫+谷口尚子 / 宮原建築設計室
宮原輝夫

段差が役割を示しつつも、途切れないワンルーム感を保つ。コレクションを引き立てながら、緩やかにつながる空間。

中庭を核に、ひとつながりの空間が緩やかに広がる。

床を浮かせた構成が、住宅を“作品”のように際立たせる。

壁を立てずに視線を貫き、家具が空間をやさしく分節する。

中庭の光と木の質感が、静かに心を整える余白となる。

群馬県に建つこの住宅は、著名デザイナーの作品を多数収集するコレクターのためにつくられた“住宅という機能を持った作品”です。結婚前のパートナー同士という状況から、将来の変化に柔軟に対応できるよう、内部はほぼワンルームの構成とし、家族構成が変わってもリノベーションがしやすい仕組みを組み込みました。 
特徴的なのは、建物を支える構造体を外周部と中庭を囲む4本の柱だけに限定した点です。室内の壁はすべて途中で止められ、天井まで届かないため、空間がひとつにつながる開放的な印象をつくり出しています。外側には構造体が見えないため、ぐるりと360度を窓が囲うような構成となり、どこにいても均一で柔らかな光が入る空間が生まれました。
建物自体はコンクリートの台の上に木造の箱をのせるような形式とし、床を60cmほど上げて浮遊感のある佇まいとしています。斜めに振ったボリュームが生み出す余白は、用途を限定しない“なにもないスペース”として、住む人の感性によって自由に育てられる場所になっています。
コレクションを美しく見せることがこの家の中心にあるため、時間の概念を忘れるような静謐さを重視し、床材は空間の役割ごとに繊細に切り替えています。好きなものと深く向き合いながら暮らすための、余白と光に満ちた住まいです。

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宮原輝夫+谷口尚子 / 宮原建築設計室
宮原輝夫

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